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若さのカタルシス / 郷ひろみ

カタルシス…浄化…これ、歌謡曲なのかな(^^;)

若さのカタルシスjake.jpg

チャートアクション

「若さのカタルシス」は郷ひろみさんの35枚目(洋楽カバー盤を除く)のシングルとして
1980年11月に発売され、オリコンシングルチャートでは最高15位(同年11月24日・12月1日付)、
同100位内に14週ランクされ17.2万枚の売り上げを記録しました。


作家について

作詞は1978年頃から夫の宇崎竜童氏以外の作曲家とも積極的にコラボを始めていた阿木燿子氏。
阿木氏はそれまでにも郷ひろみさんには「帰郷/お化けのロック」「禁猟区」と作詞しましたが、
他の歌手への提供曲、特に男性歌手への提供では、
「若さのカタルシス」のような内省的な歌詞は珍しいのではないでしょうか。

作曲は郷ひろみさんにはそれまでにも「バイブレーション」「ハリウッド・スキャンダル」を
提供しヒットさせていた都倉俊一氏。

編曲は、すでに多くのヒット曲を手がけていた萩田光雄氏で、以上の3者の組み合わせによる
ヒット曲はこの「若さのカタルシス」だけではと思います。


楽曲について

リズムはオーソドックスな8ビート。
キーはAマイナーで、歌メロには転調はなく、平行調のCメジャーに寄り道する箇所も全くありません。
しかしカウンターライン(ベースラインを1音か半音ずつ動かしてそれに伴いコードを切り替える手法)、
ディミニッシュコードの多用によって、全体にモヤモヤとしてシュールな雰囲気を作り出し、
それがこの曲の持ち味となっています。

具体的には、歌始めから Am→Am/G→F#m7-5→F6…とベースラインが1音・半音単位で下降、
また大サビの ♪朝な夕なに♪ で Am→E7/G#→A/G→F6 と同じようにベースが下降していますね。
そのあたり、そして次の説明のためにもこの楽譜をどうぞ:
若さのカタルシスscore.jpg
ディミッシュコードとは、例えば Cdimならば、Cを基点としてその1.5音(半音×3)上のD#、
その1.5音上のF#、そしてさらにその1.5音上のAを重ねて全部で4音で構成されるコードです。
その響きはドミソの和音のようにそれだけで完結してしまうような安定したものではなく、
早く次の和音に移ってくれ~、落ち着かないよ~!と言いたげな、曖昧で不安定なものです。
そんな響きを利用して不気味さを感じさせているんですね。

ディミニッシュコードは不思議な特性があります。
実際に鍵盤で見てもらうとよく分かるのですが、Cdimの例で最後のAの、
さらに1.5音上は基点からちょうど1オクターブ上のCとなります。
つまりディミニッシュコードの構成音は、隣り合った音と音の高さの差がどこも1.5音なんですね。

なので、楽譜で歌い終わりに近い部分 ♪おどけてばかり♪ では表記上D#dim→F#dim→Adim
となっていますが、それらはどれも構成音が同じで、ベース音だけが違うわけです。
さらに言えば、それらとCdimも、構成音は同じになります。
Cdim/D#(あるいはCdim on D#)…などとも書けない事もないのですが、
習慣的に、そのような表記はしません。
(注:ディミニッシュは根音を含め3音で4音目は6thだ…との説もありますが、
通常上記の4音で使うのが一般的なので、そのように書かせて頂きました。)

そしてもう一つ、大きなポイントがBメロ ♪燃えるSunrise Sunshine♪ の部分等に、
キーがAmであるのに、F#7→B7 のコード進行が登場する事です。
これは歌謡曲・歌謡ポップス全体を見ても極めて特殊な例であると言えます。
この章の初めの部分に「転調はない」と書きましたが、そのコード進行が登場する1小節だけは
B7がドミナントであるEmのスケール(音階)に転調している、とも解釈できそうです。
このようなコード進行の元ネタは何だろう? 洋楽で同じような例をご存知の方、
おられましたらぜひ教えて下さい。


都倉俊一氏は曲先が多いそうですが(例えばピンク・レディーに提供した楽曲は、
「マンデー・モナリザ・クラブ」以外は殆んど曲先だそうです)、
この「若さのカタルシス」ではAメロに唐突に2/4拍子が入るあたり、
また歌詞とメロディーの親和性からしても詞先の可能性が高いと思います。
特に歌い終わりの ♪ぼくにとっての不幸さ♪ のまとめ上げ方にそれを感じます。

歌メロの音域は下のEから上のFまで、1オクターブと半音しかないのですが、
その中で音使いが高い音に集中しているので、歌うと喉にかなり負担がかかりそうですね。


アレンジについて

都倉俊一氏がアレンジに萩田光雄氏を起用する例は少なく、
他に私が知っているのは「私のハートはスローモーション」(桑江知子)だけです。

都倉氏も萩田氏もイントロや間奏などに歌メロを採り入れる事は殆ど無いのですが
(都倉氏ではピンク・レディーの「ピンクの林檎」は数少ない例外と言えるでしょう)、
「若さのカタルシス」はイントロが歌メロのBメロの半分をそのまま採り入れてあり、
萩田氏のアレンジでは極めて珍しい例です。
恐らくディレクターかプロデューサーサイドから指示があっての事と思いますが、
キーがAmなのにコードがF#7で始まる曲など、恐らく世界的にも稀少でしょう。

萩田氏の起用の理由に、ギターサウンドを使った編曲にしたいとの意向があったのでは
とも考えられます。
都倉氏自身の編曲はキーボードとストリングス・ブラスが中心のオーケストラサウンドが基本で、
ギターはコードのカッティングや裏メロなどが主な仕事となっているものが多いのですが、
萩田氏は山口百恵さんの楽曲等、ギターを前面に出したサウンドで成功している実績があり、
「若さのカタルシス」でもそれが求められたものと思われます。

この曲ではディストーションをかけたギターだけで左右と中央の3トラック使われていて、
イントロや間奏、コーダで主メロを演奏したり、
左右のギターはコウモリが飛び交っているような効果音的な使い方もされ、
全体の引き締めの役割も果たし…と重要なサウンドとなっています。

Bメロに入る時の、叫び声を模したような女性の3声コーラスも非常に効果的で、
曲全体を支配する不思議さ、不気味さをさらに増幅していますね。


この曲のカラオケをバックにピアノで演奏していると、
そのBメロに入る直前や、歌い終わり ♪ぼくにとっての不幸さ♪ の直前に、
微妙なタメがある事がわかります。 わずかですが、ブレイクしている時間が長いんです。
萩田氏はレコーディングの時、ドンカマのテンポを操作する事がある…との噂があり、
本人もそれを認めていますが、
もしかすると「若さのカタルシス」でもそれを行っているのかも知れません。

参考までに…6年も前の動画ですが(^^;)
https://www.youtube.com/watch?v=rH0q2ilr6WE


使われている楽器とその定位は…

左: ハープシコード エレキギター

中央: ドラムス ベース ピアノ ハープシコード エレキギター 女性コーラス

右: エレキギター タンバリン

・ストリングスは左方向がバイオリン、右方向にビオラとチェロのオーケストラスタイル
・左右のエレキギターは左右端ではなくやや中央寄り
・イントロとコーダでは中央のギターのディレイ音をEQで丸めて左右に配置している

この曲ではコードはピアノとハープシコードに担当させ、ギターはイントロ等の主メロと
裏メロのアドリブ演奏(書き譜かも知れませんが)を担当しています。

中央から聞こえる高音域担当のコード楽器は弦楽器のようにも、ハープシコードのようにも
聞こえるのですが…どうでしょうか?

中央のギターのディレイ音と思しき音は、当初シンセサイザーでギターのフレーズを
ユニゾンで演奏しているものと思っていたのですが、
よく聴くとギターのフレーズとあまりにピッタリと合っているので、
ショートディレイさせた音と判断しました。


付記

今月11日、「ヒット曲の料理人 編曲家・萩田光雄の時代」(リットーミュージック)
が発刊されました。

萩田光雄氏本人の執筆を中心に関係者のインタビュー、川口真氏・船山基紀氏との鼎談(ていだん)、
作品リストなどで構成されていて、萩田氏が仕事中に考えていた事や関わった歌手についての印象等、
これまで知り得なかった事柄が満載の良書です。
少し残念だったのは、クリス松村さんのインタビューが全体の構成の中でやや浮いていた事、
作品リストが全ページの約1/3を占めていた事、でしょうか。

一昨年の「ニッポンの編曲家」、昨年の「作編曲家 大村雅朗の軌跡」と、
以前は音楽業界の内輪の話でしかなかったような、でもファンならば知りたかった事が
書かれた書物が次々と出され、嬉しいような、でも「これ、コアなファンしか知らなかったのに」
と言った事まで書かれていてちょっとがっかりするような…。
しかし音楽ファンとしては、嫌でも興味を持ってしまいますね(^^)

今後も9月末日には「ヒットソングを創った男たち~歌謡曲黄金時代の仕掛人」も
シンコー・ミュージックより発売されますし、楽しみは続きそうです(^^)

個人的には、「ニッポンの編曲家」の第2弾を期待しています。
馬飼野兄弟、森岡賢一郎氏、青木望氏、横内章次氏、竜崎孝路氏、都倉俊一氏等、
まだまだ採り上げてもらいたい音楽家がいますよ! DU BOOKSさん!!


「若さのカタルシス」
作詞 : 阿木燿子
作曲 : 都倉俊一
編曲 : 萩田光雄
レコード会社 : CBSソニー
レコード番号 : 07SH881
初発売 : 1980年11月1日

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追記:

7月8日は更新をお休みします。
来週、またよろしくです!


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もとまろ

ぽぽんたさん、こんばんは。

何度聴いても覚えられない歌もありますが、「若さのカタルシス」は高校生の頃から地元のラジオ番組「ユア・ヒット・パレード」で知っていて心にしっかり残っています。久しぶりに聴きました。
あ、1980年11月というと、たのきんが目立ち始めた時期ですね。てことは聖子ちゃんも…。

改めて聴くと、書かれたとおりひろみさんが歌うメロディーの音使いが本当に高いですね。Aメロをはっきり覚えていなかったので、特にAメロを聴いててそこを思い知りました。 で、そこが「25歳だけど中学生みたいでかわいい年下男の叶わぬ恋」というイメージ、誰に言うでもない思いの独り言を聴かせてくれてるように思いました。

都倉先生がこの歌の編曲をされていないと読ませていただいてたら、ピンク・レディーの歌の編曲していない方がいくつも思い出されました。
確かに、海外進出し始めた頃の大人の歌「マンデー・モナリザ・クラブ」以降は先生作曲でも編曲は別の先生がされています。いかにも都倉先生って感じのオーケストラサウンドではなくて、伴奏のメロディーラインがより滑らかでギターが効果的に使われている歌ばかりです。渡米と大人化、それを打ち出す第一歩がアレンジ担当の先生起用、てことでしょうか。
そういえば、当時はひろみさん担当のギタリストが三原綱木さんだったんですよね。レコードは綱木さんが気持ちよく弾いておられるのかな?

そして、「若さのカタルシス」はひろみさん主演ドラマの挿入歌で、作詞の阿木先生は女優として共演、作曲の都倉先生は音楽担当だったそうですね。ドラマのあらすじを知れば、番組の縁で、番組内容をちょっと意識してつくられたのかなと想像してしまいます。
「ミセスとボクとセニョールと」というドラマ。全然知りませんが、「ムー」みたいに生放送の回もあった、コメディータッチのドラマだったそうです。ぽぽんたさんは、ご覧になったことありますでしょうか?
by もとまろ (2018-06-27 00:08) 

ぽぽんた

もとまろさん、こんばんは!

私はこの曲を知ったのは多分、「ザ・ベストテン」と当時のNHK FMの歌謡番組でした。
この時代は歌謡曲、本当に元気でした。 秀樹さんも絶好調でしたし(^^)

高音続きのメロディーからそのような情感を見つけ出すって、すごいです。
私はもう、ピアノで弾いていて「あれ~、ここは歌うのがしんどそうだな」
くらいにしか思っていませんでした。 なのでもとまろさんの言葉、
とても新鮮です。

都倉氏は自身がバイオリンから音楽を始めたと言う御仁ですから、
やはりオーケストラアレンジにこだわりがあるのかも知れません。
しかし時代はやはりギター中心のサウンドを求めていたという事で、
そちらに明るいアレンジャーに頼む、となったのですね、きっと。
三原綱木さんが郷さんと一緒に映っていたシーン、そう言えば今思い出しました。
「マイ・レディー」とかもそうでなかったかな?

「ミセスとボクとセニュールと」ですか~、タイトルだけは憶えとります(^^;)
そろそろホームドラマが下火になっていた時代かな? 多分私はその頃は、
駅で懸命にアルバイトをしていた頃です。
1年間、駅員として切符切ったり、精算したり、電車の乗客の押し込みなどしてました(^^;)

by ぽぽんた (2018-06-28 00:12) 

Massan

ぽぽんたさん、こんにちは。
ちょっとコメントするタイミングが遅くなりました。スミマセン。
1980年となると新御三家の皆さんも20代半ばの立派な大人だけに、発売された曲も今改めて聴けば詞もぐっと大人びたものが多かったですね。この時点でどなたもすでにデビューされてから7~8年が経ち、いわゆる「脂がのりきった時期」(表現が古いかな?)だったのでしょうか。この曲にはぽぽんたさんが表現された「不気味」な印象が強く、この曲を聴いたときの何とも言えないムズムズ感もちゃんとした工夫があったんですね。
私は「THE GREATEST HITS OF HIROMI GO」の音源はあるものの(「若さのカタルシス」が収録されていました。)、これに収録されていない曲でレコード音源で聴きたい曲がたくさんあるのですが、なかなか見当たりま。「ゴールデンアイドル」的なCDが出たら是非とも欲しいんですけどねえ。
それでは。次回も楽しみにしています。

by Massan (2018-07-01 08:00) 

ぽぽんた

Massanさん、こんばんは! いえいえ、来て下さるだけでとても嬉しいですよ(^^)

仰る通り、1980年頃は新御三家も新人ではなくなった代わりにどの人も
歌手として充実していた時代を迎えていて、良い曲も多かったですね。
私はドラマは観ていなかったので「若さの…」を初めて聴いたのは歌番組でしたが、
後にFMでレコードの音を初めて聴いた時は新鮮でした。
今聴いても、本当に良く出来ているな、と思います。

ベスト物CDはどうしても、その選曲に不満を感じてしまうものですよね。
西城秀樹さんの事もありますし、男性歌手版「ゴールデン☆アイドル」が
いくつか企画されるのでは…と、私も期待しています(^^)

今日はお休みしましたが、次回もまた頑張りますので、ぜひまたお読み下さい。

by ぽぽんた (2018-07-01 23:59) 

青大将

ぽぽんたさん、地震大丈夫ですか? 今速報聞いてたら、かなり大きい地震の様なので心配になりました。
by 青大将 (2018-07-07 20:38) 

ぽぽんた

青大将さん、ありがとうございます。
少し大きく、また揺れの長い地震でしたが、物が落ちたりする事もなく、
大丈夫でした。 ご心配をお掛けしました。

今、中部地方から西日本にかけて大雨で大きな被害が出ていますね。
そちらの方は大丈夫ですか? 今後、被害が広がらない事を祈っています。

by ぽぽんた (2018-07-07 23:35) 

もっふん

★コード進行について★

キーがAmなので書いていて分かり易いのが嬉しいです(笑

 F#7 > B7 > E7 > Am

と言う進行は確かに「音楽理論的には全く問題ない、けれど珍しい」と思います。
長調の曲であれば

 A7 > D7 > G7 > C

と3連打のドミナントモーションは、場合によっては E7 からの4連打も珍しくありませんが、これは起点となる A7 や E7 が曲のどこからでも容易に展開出来るためで、Am の曲で F#7 を出してくるのとはかなり意味合いが違います。

非常に一般的に言うと Ⅱm7-V7 を挟まないドミナント連打は「くどい」印象がとても強く(実現出来るハーモニーの音選定に制約が多いギターで演奏した場合には特に)、ある種のフォークソング臭さも強くなるために、その辺りは本曲のオケアレンジでも露骨にならないように細心の配慮がされていると思います。

「ヒット曲の料理人 編曲家・萩田光雄の時代」によれば作曲家が指定して来たコードネームを編曲の段階で変えてしまう事も許されていたようで(編曲家が「もっと良くなる」と確信した場合ですが)、本曲においても実はもっと無難なハーモナイズが下敷きになっていた可能性も無いとは言い切れません。ぶっちゃけ一番単純には

 Am > B7 > E7 > Am

でも充分成立すると思います。

ここで作曲家か編曲家の脳裏に

 ファ# > シ > ミ >ラ

と言うベースラインが思い浮かんでしまった場合にも、

 F#m7-5 > B7 > Em(E7) > Am

メロディックマイナースケール上のダイアトニックコードである F#m7-5 はトニック代理和音なので(Am on F# とも書けてしまいます)冒頭に持って来ても大丈夫ですし、B7 への移行は変則的な Ⅱm7-V7、その B7 は Em(E7)に対するセカンダリードミナント 7th、と言う構成が第一選択肢になるかと思います。

それくらい、Am の曲に登場する F#7 と言うのはゴリッとした存在感があるんですね。

曲解析の趣旨を逸脱しますが、メロディラインだけが決まっていて、音域が狭いギターなどで伴奏するのであれば、ドミナント進行の色を目一杯薄めて経過和音的に、

 A# dim > B7 > G# dim > Am(※)

なんて言うのもボーカルには優しい(原曲では歌メロに 7th があってコードの主音と1全音でぶつかっているので)ボイシングです。この進行の場合、伴奏の上声部で、

 ソ > ファ# > ファ > ミ

と言うクリシェラインを形成出来るのでボーカルとハモッてる感じが出せます(ボーカルと同じく下降ラインなので下声部に使うとシマらないです)。

(※)ドミナントモーションの推進力はドミナント 7th コードに含まれる 3rd と 7th が形成するトライトーン(3全音音程の2音)にあると言うお話は各所でして来ましたが、A#dim ではラ#とミ、G# dim ではソ#とレが、それぞれ F#7 と E7 のトライトーンと一致します。

まあ、都倉先生は 7th の使い方がとても巧い方なので最初から原曲通りのコード指定であったのだとは思いますが、これが'80年代も後半以降であれば、緊張感を犠牲にして上に書いたような第一印象が「オサレ」な、別の表現をすると「耳障りが良くて毒気の無い」進行が選ばれていたのかも知れません。
_
by もっふん (2018-08-02 02:13) 

もっふん

★ディミニッシュコードについて★

>ディミニッシュは根音を含め3音で4音目は6thだ…との説も

和音の基本はトライアド(3音和音)であると言う立場に立つと 6th と言う解釈になるんですね。トライアドは隣接する2音が長三度(2全音)もしくは単三度(1.5全音)で積層しているので、

 (ド)長三度(ミ)短三度(ソ) > メジャー
 (ド)短三度(ミ♭)長三度(ソ) > マイナー

と言う基本和音の他に可能な組み合わせとして

 (ド)長三度(ミ)長三度(ソ#) > オーグメント(aug)
 (ド)短三度(ミ♭)短三度(ソ♭) > ディミニッシュ(dim)

が考えられます。通常 5th の音(ソ)は根音の三倍音(完全五度)であり和音が和音としての響きを持つために非常に重要な音ですので滅多な事では音程をいじらないのですが、そこを敢えて増五度まで高くした(augment=増強する)、逆に減五度に低めた(diminish=低減する)事が、それぞれのコードネームの由来になっています。

車のヘッドライトを下向きにして明るさを減じるスイッチの事をディマーと呼びますし、英語で8月を August と呼ぶのは初代ローマ皇帝アウグストゥス(本来は「尊厳者」を意味するラテン語)にちなんでの事と言うのはご存知の方も多いと思いますが、和音の語源もこれらと同じです。

なので楽典的に言うとディミニッシュと言うのは 5th の扱いについてしか説明していないので、更に短三度上のラを同時に用いるのであればそれは 6th であると言うのがゲンミツなゲンミツな理屈なのですが、私の知る限り近代音楽で敢えて 6th の使用を忌避するケースは無く、ぽぽんたさんが説明されている通り「同じ構成音で名前が4つある4音和音である」として扱う方が実情に合っていると考えています。たぶんポピュラー系のミュージシャンはプロの方でもそういう認識でおられると思います。

余談ですが、ディミニッシュコードが1オクターブ(6全音)を均等に4分割した形になっている事は記事中でも説明されていますが、オーグメントコードもまた1オクターブを均等に、こちらは3分割した形をしており、ルートの違いだけで「C aug = E aug = G#aug」という関係が成立します。

古典的な「ドレミファソラシド」と言う「ミファ」や「シド」に半音程を含むスケールではなく、1オクターブを1全音で6等分した音階「ドレミファ#ソ#ラ#ド」をホールトーンと呼び(このブログの読者であればアニメ「鉄腕アトム」主題歌のイントロ冒頭部分をご記憶かも知れません)、この音階で書かれた楽曲ではオーグメントコードが基本となります。

そしてこのホールトーンスケールの始祖と言われる音楽家こそが、ぽぽんたさんと誕生日が同じ(もちろん日付だけです・笑)大作曲家・ドビュッシーであったりするのでした。

え?話が落ちてないって?(ばき
_
by もっふん (2018-08-05 10:04) 

ぽぽんた

もっふんさん、こんばんは! 相変わらずお返事が遅く申し訳ありません。

コード進行に関するレクチャー、ありがとうございます。
経験と聴いた感じがすべての私としては、大いに勉強させてもらっています。
ディミニッシュにしても、理論を読む前にピアノで耳コピしていて「え??」と、
まるで自分で発見したような感覚だったので、それから理論を知ってしまうと
逆に「な~んだ」って事も多々ありまして(^^ゞ

それはコード進行に限らなくて、ある曲で「あ、これって他の曲で聴いた事のない流れだ!」
と鬼の首を取ったような気分で喜んでいると、数年後にそれがビートルズの
ある曲で使われていたフレーズやコードのパクリとわかったり…と、
何より多くの曲を知るのが必要なんだな、と思い知らされるものです。

ドビュッシーは私よりも99歳年上なのですが、同じ誕生日なのは本当に誇りなのです。
同じような事を、岡江久美子さんの娘の大和田美帆さんも言っていました
(さらに岡江久美子さんは8月23日生まれだそうです(^^))。
私と同じ誕生日の芸能人って結構多くて、平山みきさん、北川景子さん、斎藤工さん、
タモリさん、菅野美穂さん、故・岡田有希子さん、みのもんたさん…と、
個性の強い人が多いようです(^^;)
全くの余談でした。

by ぽぽんた (2018-08-07 23:37) 

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