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薔薇とピストル / ギャル

お久しぶりです。 更新していないとアクセス順位が上がる不思議なブログです(^^;)
今日更新したらまた圏外か…ま、いいや。

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薔薇とピストル.jpg

ここ一年ほど、気がつくとほぼ毎日のように見ている動画があります。
それが今回採り上げた「薔薇とピストル」(ギャル)なんです。
YouTubeにいくつかアップされている中の、フルコーラスで歌われている動画です。

この動画では、歌(勿論生歌です)も振り付けも完璧。
一部レコーディング音源とはコーラスの付け方が異なる部分があるのですが、
むしろこの方がいい出来とも思えるほど。

振り付けは「いかにもアイドルっぽい」と思いきや、特にエンディングでは3人とも
ワイルドに体をくねらせ、どことなくサイケっぽくさえ感じさせるもので、
我々の年代で子供の頃に「見たいけど見たらいけないもの」のように思っていた、
そんなものを思い起こさせてくれるパフォーマンスです。

ギャルはオーディション番組「スター誕生!」でスカウトされデビューした石江理世さん、
黒木真由美さん、目黒ひとみさんの3人組です。
個人的には石江理世さんのデビュー曲「目かくし」はよく覚えていて、岩崎宏美さんのデビュー曲
「二重唱(デュエット)」を初めて耳にした時に「あれ、何だか似てるなー」と思ったものです。

デビューしたものの大きな成功を収められなかった女性アイドル歌手の3人と言うことで、
ギャルがデビューした時には期待されていたと言うよりも「売れないアイドルの寄せ集め」
のようなイメージを持たれてしまった感が強く、それをプロダクションや制作側が
払拭する努力を怠ったために結局短命のグループで終わってしまったのでは
…と、全くの独断ながら私は思っています。

現在手に入れられる音源は、SOLIDなる名前のレーベルから発売されているCD「薔薇とピストル
~コンプリート・コレクション」だけで、それにはレコードで発売されたシングル、アルバムの
楽曲が全部収録されています。

それを聴くと、アイドル歌謡の範疇を超えた実力派コーラスグループであることを認識できます。
レコーディング作品だけでなく、先程触れた動画を観てそれが生歌であることを知ると、
そのパフォーマンスに驚嘆するのです。
しかも、デビュー当時には石江理世・黒木真由美18歳、目黒ひとみ17歳。
現代では、その年齢でギャルに匹敵するコーラスを実現できる歌手は皆無でしょう。

ギャルとしてのデビューが決まってから、それぞれアイドル歌手特有の歌い方の特徴などが
すべて封印され、歌うために必要な技術を1から鍛え直されたに違いありません。
そして、これは推測ですが、3人とも楽譜を見てすぐに歌えるほどの実力だったと思われます。
コーラス録りはオケ録りに近いものがあり、写譜等に何らかのミスがあったり、あるいは
急な変更が生じた時、それに即座に対応できることが必要だからです。

「薔薇とピストル」は、レコーディング作品とテレビ出演とでは歌唱に少々相違があるのですが、
動画を観る限りそういった部分も全く危なげなくこなされています。

70年代以降、レコーディングで使用される女性コーラスはシンガーズ・スリーとEVEばかりでした。
ギャルはアイドル歌謡としては成功しませんでしたが、コーラスの実力は確かなものだったので、
続けていればその後の多くの歌謡曲、ニューミュージックなどで重用されたことでしょう。
そうはならなかったことが、私には残念でならないのです。

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ギャルがデビューしたのは、1977年10月。
当時はピンク・レディーが物凄い人気を博していたり、キャンディーズが3ヶ月前に引退宣言をして
世間を騒がせていたり、沢田研二・山口百恵・石川さゆり・狩人・清水健太郎・郷ひろみ…等々、
歌謡界がとても華やかな時代でした。

そんな中、「薔薇とピストル」はデビュー曲としては異例なほど高度な楽曲でした。
それは曲の構成、コード進行、アレンジなどほぼすべての面で言えることで、
例えば洋楽好きな音楽ファンにもアピールしていれば、結果が変わっていたかも知れません。

今改めてそのレコーディング音源を聴くと、歌詞、メロディー、アレンジ、演奏、歌唱、
そのすべてに物凄く熱が入っているのがよくわかります。
それを重い、苦しいと感じる人がいるのも確かでしょうが…。


作詞は阿久悠氏。
ソロ時代のメンバーすべてのデビュー曲を書いているので当然の人選、
と言うよりもギャルの実質的なプロデューサーだったと思われます。
氏の著書「命の詩」には、10行を費やしギャルへの賛辞が書かれています。

作曲は川口真氏。
筒美京平氏、都倉俊一氏、鈴木邦彦氏等と共にヒット曲の多い作曲家です。
派手な曲でも品の良さが感じられるのが、川口氏の持ち味ではないかな。
自身でも編曲を行う(というよりも、元々編曲家なんですね)のですが、
「薔薇とピストル」では恐らくより派手なサウンドが求められたために、
馬飼野康二氏にアレンジが任されたのでしょう。

なので編曲は馬飼野康二氏。
70年代初頭からつい最近まで、実に長い期間作曲、編曲活動を続けています。
程よく派手、しかもアカデミックなアレンジの楽曲を多数残しています。
「この曲、カッコいい!」と思うと氏のアレンジだったということが、
私はとても多いです。

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ではこの曲の歌メロ譜をば:(サムネイルをクリックして頂くと別ウィンドウで開きます)
私が採譜したものなので、どこか誤りがあったら知らせて下さいねー。

薔薇とピストル-1.jpg

構成としては、1番では始めと終わりに、2番では終わりにサビを置き、
その間で次々とメロディーが変わり盛り上がる、メリハリの強い作りです。
メロディー譜にサビからDメロまで、その最初の小節の上に赤い字で表示しておいたので、
参考にして下さい。


まずAメロ。
ここのコード進行は、キーを半音下げると Am→C7→D7→Em7→Am 。
歌詞がアメとムチ、どっちが好き?と言っているようなものなので、コード進行もそれに合わせ
明るいメジャーキーと暗いマイナーキーを行ったり来たりしている感じです。
このコード進行、私はこの曲で初めて見ました。

♪バッラの花とピッストルでは…♪ とハネているのがポイントですね(^^)


BメロはCメロへのつなぎの役割をしていますが、Aメロでは3人のユニゾンだったのが、
Bメロではパートが3つに分かれたコーラスになっています。
その最も高い音が各コードの7thやテンション音であるのがポイントですね(^^)


Cメロはちょっと息抜き…と言った感じの静かなフレーズであり、
ソロと♪アッアー…♪ のスキャットに分かれる、この曲で2番目の聴かせどころ。
ソロ部は、レコーディング音源では目黒ひとみ→石江理世→黒木真由美(→全員)の順ですが、
テレビ等では黒木真由美さんが通して歌っていました。

動画を観ると、目黒・石江両人による ♪アッアー…♪ が実に巧みで、
いったん後ろを向き前を向いた直後に2パートコーラスで全く乱れず正確に歌えるのは、
大変な技術です。

ここでのコード進行は E7→Am→G7→C で、歌謡曲の定番中の定番と言った感じです。
全体にコード進行が凝っている分、部分的にそういう流れがあるとどこかホッとします。

因みにその ♪アッアー…♪ は1番2番とも、レコーディング音源では4回、
動画での歌唱では3回。
ここはレコードでも動画のように3回でやめる方がより洋楽っぽくてカッコ良かったはず…
とちょっと残念。


Dメロ。 ここはレコーディング音源では全員のユニゾン→オクターブユニゾンで歌われます。
そこでは高いパートが目黒・石江、低いパートが黒木と思いますが、
高いパートは地声でD#まで出しているんですね(動画ではファルセットですが)。
いつも引き合いに出して申し訳ないのですが、当時の、ハイトーンが絶好調だった
岩崎宏美さんでさえハイD止まりだったので、
そんなことからもギャルがいかに厳しく訓練され世に出たのかが伺える気がします。

ここでのコード進行は Am→Dm→Am→B7→F7→E7sus4→E7 です。
B7の次のF7はただのFでも問題ないのですが、7thを加えることでどこかスッキリしない、
モヤモヤ感を引きずったまま次の展開に流れ込むような演出が感じられます。
同じようなコードは「冬の色」(山口百恵)や「雪あかりの町」(小柳ルミ子)など
意外と色々な曲で使われているんですよ。

そして、このDメロで驚くのは、動画での歌唱なんです。
オクターブユニゾンで3小節歌った後、サビに流れる前の ♪数えるまで~♪ の「まで~」で
3パートに分かれて E7sus4→E7 の微妙なコードのコーラスになるんです。
つまり、テレビ等での歌唱ではレコーディング音源よりも高度なことを行っているんですね。
そのおかげで次に来るサビがより盛り上がる効果をもたらしています。

そして、1番ではAメロの前にもあったサビ。
ここでは「私達の実力を聴いて!」と言わんばかりの、3パートのクローズハーモニーの、
見事なコーラスで歌われています。
♪好きになーればー♪ の「ばー」では思い切りポルタメントを利かせて、
一度聴いたら忘れられないようなインパクトの強さも持たせてあります。

尚、レコーディング音源では ♪好きになーればー(好きになーればー)…♪ と
追っかけのソロボーカルも入っていますが、動画でのパフォーマンスを知ってしまうと、
そのソロボーカルは「要らないじゃない?」と私は思ってしまいます。

ここでのコード進行は Am→FMaj7→Am→FMaj7→Dm→F→E7→Am 。
それ自体は定番に近いものですが、正直言うと、FMaj7かただのFか、
何度聴いても判然としなくて…どう思います?


もうひとつ。
間奏が、やけにカッコいいんですね。
ギターとストリングスのフーガっぽい演奏に続いて、全楽器が裏打ちを繰り返し、
終わり近くで隙間にドラムスが…。
2番を歌い始めるタイミングを誤りそうですが、そうなりそうな感じさえカッコいい。
この曲、いったいどれほどパワーが入っているのだろう…?

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この曲で使われている楽器は:

左: エレキギター クラビネット トロンボーン

中央: ドラムス ベースギター エレキギター(ディストーション)

右: エレキギター コンガ トランペット

そしてオーケストラ配置のストリングスが左右に大きく広がって定位。
ほぼ典型的な70年代歌謡曲のパターンです。

「薔薇とピストル」はミックスが2種類あります(両方とも同じCDに収められています)。
シングル盤バージョンと、1978年4月に発売されたアルバム「ギャルのスペース・オペラ」
に収録されたバージョンです。

両方とも楽器の定位はほぼ同じながら、
シングル盤バージョンは各楽器にコンプレッサーをかけて輪郭を強調したサウンド
と言った印象で、パワーはあるがハイファイ感に乏しいややラジオ的な音なのに対し、
アルバムバージョンはコンプレッサーを取っ払って自然で伸びのあるハイファイな音、
その代わり各楽器のインパクトが弱まっている…と言った感じです
(コンプレッサー云々はあくまでも個人的な印象、ですが)。

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アレンジは典型的なロックのリズムをベースにして歌謡曲らしさをふんだんに採り入れた、
馬飼野康二氏の最も得意とすると思われるパターンです。

イントロはディストーションを効かせたオクターブユニゾンのギターで始まり、
それを囲むように両側からホーン隊が盛り上げ、ストリングスが絶妙に絡みます。
そのあたり、やはり馬飼野康二氏が作・編曲した「古い日記」(和田アキ子)と
共通点が多いのがわかります。

特にサビでのストリングスは力強く、ピタッと着地するようなキメ方をしていて、
演奏者の技量の高さを感じます。
イントロでの、怪しさを感じさせるもやもやした演奏もユニークですね。

Cメロ部だけで聴かれる、アルペジオ奏法でクリーンな音のギターも何とも歌メロとよく合い、
雰囲気を盛り上げてくれています。

しかし何と言っても、先述もしましたが、楽曲全体に物凄い熱量を感じるんですね。
なぜそう感じるのかは自分でも分かりません。
アレンジの力かも知れないし、スタッフ・歌手の「いい曲を作ろう」と言った勢いかも知れない。
発売から46年近く経ったそんな曲に再会したことにささやかな幸せを感じるワタシです(^^)

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今から8年ほど前、私の住居から少し離れた所にあるイオンで、ミッツ・マングローブさん率いる
「星屑スキャット」がミニライブ(実質キャンペーンかな)を行ったので、観に行きました。
その時に歌われた1曲がギャルのシングル2作目「マグネット・ジョーに気をつけろ」でした。
実は自分、それがギャルの曲と言うことをそれまで知らなかったんです(^^;)
「何だー、この曲!すごく洒落てる」とびっくりした私は、すぐにAmazonでギャルのCD(既記)
を購入し、聴き入ってしまったワケです(あ!星屑スキャットのCDでなくてスミマセン)。

CDを通して聴くと、当時(1977年前後)の歌謡ポップスの、私が好きなサウンドの要素、
例えば派手なストリングスやシンセサイザーと生オケの融合、そして厚いコーラスなど、
ほぼ全部の要素が過不足なく入っているんです。

CDにその全曲が収められているオリジナルアルバム「ギャルのスペース・オペラ」は、
シングル曲以外ほとんどの曲のアレンジをあかのたちお氏が担当しており、
まさに当時の歌謡ポップスの真骨頂とも言えるサウンドを堪能できるのですが、
1曲だけ深町純さんがアレンジした楽曲「宇宙船GAL」はまさに歌謡曲離れした、
当時流行する兆しを見せていたフュージョン系に近いサウンドであり、
宇宙人のつもり…と思しきテープ倍速音声SEが突然飛び出したりと、
あの頃の商業音楽の制作ってどれほど創造的だったのだろうと、
機材には不自由しないはずなのに中味が貧困な作品ばかりの現代と比較して感心するやら、
羨ましくなるやら。

ギャルは弱冠17歳、18歳であれほどの技術を身につけ生歌でもその力を発揮していたのに、
今では歌手自らレコーディングで「さっきの歌、ピッチを修正しておいてね」などと言うことも
あるらしい。
そんな心掛けの人間がろくな作品、作れるはずはないのですけどね。


さて、そのギャル。
「マグネット・ジョーに気をつけろ」を最後に石江理世さんが引退してしまったのは、
今思うと本当に残念でした。
キャリア的にもギャルのリーダー的存在だったはずですし、コーラスのバランスでも
もう二人をしっかりと支える役割を果たしていたので、その損失は大きかったと思います。
石江理世さんの後継に中世古明代さんが加入し、それからまた半年以上の
トレーニングがあったそうです。

私もギャルはデビューしたばかりの頃はテレビで観た記憶がありますが、
少しするともうその姿を見ることがなかった。
そのまま、私の記憶からも消え去っていました。

ギャルはアイドルグループではなく、ミュージシャン。
作品を聴く限り、作家もアレンジャーもそのつもりだったのではと、今は思えます。
それが続いてくれていたら、また繰り返すようですが、
今頃は女性コーラスのレジェンドになれていたかも…。
勿体ない。
そう思えてならないのです。

それはともかく、CD「薔薇とピストル~コンプリート・コレクション」は、
私の生涯の愛聴盤の一つになりそうです。
未体験の方、ぜひご一聴をおすすめします。


「薔薇とピストル」
作詞: 阿久悠
作曲: 川口真
編曲: 馬飼野康二
レーベル: キングレコード
レコード番号: GK-143
初発売: 1977年(昭和52年)10月21日
オリコン最高位 53位
オリコン登場週数 13週

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ぽぽんたのオーディオ

私が愛用しているオーディオ装置を紹介します。
サムネイルをクリックすると大きな画像が開きます:

20230723-a1.jpg

まず左側のメタルラックにオープンリールデッキが3台もあるのが目につくと思いますが、
ラックの上からソニーTC-6360A、ソニーTC-6000、そしてTEACのA-6010です。
このうち、現在普通に使えるのはTC-6000で、残り2台はメンテ待機中です。
その2台もメカニズムは元気なのですが、アンプ部のメンテが必要になっています。

因みにA-6010の右にあるのはソニーTC-900(3号リール使用のテープレコーダー)。

天板の上にあるのはBluetoothスピーカーと、テクトロニクスのデジタルオシロ。
オシロとテスターがあれば故障個所を特定したり修理したりはほぼ可能です。
本格的に調整するにはテストテープや周波数カウンターなども必要なので、
ヤフオク物色中です。


では右の方を。
上から、パイオニアPL-1100(レコードプレーヤー)、オンキョーA-973(デジタルアンプ)、
ソニーTC-K222ESJ(カセットデッキ)、そしてソニーCDP-337ESD(CDプレーヤー)です。
それぞれ発売時期が全然違うのに、不思議と全部横幅がピッタリ同じなんですよね。

PL-1100はハードオフで1,000円で売っていたものを買って整備したものです。
なぜこれが1,000円!?と思うほど、今も全く正常に使えています。
ただ、買った時にはダストカバーがかなり汚かったので、「ピカール」で磨き込みました。
ピカールは金属磨きですが、アクリルにも使えるんですよ。

A-973はヤフオク。
レコードを聴くためにPHONO入力があるデジタルアンプが欲しかったんです。
音はきれいでいいのですが、ちょっと馬力のようなものが感じられないのが難点で…。
以前使っていたケンウッドのKA-5010の音が最高に好きだったので(事情があり手放しました)、
ヤフオクで程度がいいのが見つかったらまた買おうかな、と考えています。

TC-K222ESJもヤフオク。
買って間もなく、再生状態にしてもヘッドが上がらないという
中古カセットデッキに起きがちなトラブルが発生しました。
メカニズム部を取り外して、内部のベルトを交換して直りました。
それからもう8年くらい経ちますが、今も大丈夫です。
もう録音に使うことはありませんが、再生音は今も、実に優秀です。

そしてCDP-337ESD。 これは1987年12月に、新宿のさくらやで購入しました。
確か67,000円くらいだったかな?
この機種はとにかく重くて、13kgもあるんです。
買って帰る時には大変な思いをしました。
これまでの約36年間、一度も故障せず、今も現役です。
あ、トレーの開閉が鈍くなった時に自分でベルトを交換したことがあったっけ。
自分の中ではこのプレーヤーの音がリファレンスです。

写真は撮りませんでしたが、スピーカーはビクターSX-5Ⅱ。
中学2年の頃にオーディオ好きな友人ができて、彼の家に遊びに行くと
買ったばかりというビクターのシステムコンポーネントがあったんですね。
その装置でレコードをかけてもらったら、それはそれはいい音で。
当時、我が家ではトリオのセパレートステレオ(ST-3100)を使っていたのですが、
父を1ヶ月かけて説得し、友人宅のものよりやや新しめのパーツで構成されたシスコンを
買ってもらうことに成功したんです(^^♪ お父さん、ありがとう。
それが我が家にやってきたのは忘れもしない、昭和50年9月12日(金曜日)でした。
で、レコードプレーヤーやアンプなどは故障等で徐々に手放しましたが、
スピーカーだけはずっと使い続けているんです…もうすぐ満48年。
今も、買った当時のイメージが持続していていい音(好きな音、かな)です。

私は自分で音楽を作ったりもするのですが、その時には専用のパワードスピーカー
(アンプ内蔵のスピーカー)やヘッドホン(ソニーMDR-CD900ST)を使ったりします。
しかし最終的には必ず上の装置で聴いて確認します。

私は高級な製品には興味がなくて、ちょっと頑張れば誰でも買えそうな製品が好きです。
不思議とそういう製品はいろいろなアイディアが盛り込まれていることが多く、
何年使っても飽きないんです。
特にその傾向が強いのが、やはりかつてのソニーかな。

ここで、持論を一つ。

写真をご覧になってもおわかりかと思いますが、私はソニーの製品が大好きで、
それは小学生の頃からです。
性能は勿論なのですが、何よりもコンポそれぞれのデザインが大好きでした。
今も、特にTC-6360Aのシック、かつ機能的なデザインには惚れ惚れします。

よく「ソニータイマー」なる言葉が聞かれますが、
私はそれを実感したことは一度もありません。
電子機器、電気製品は、大切に使えばめったに故障などしないものです
(初期不良は除く)。
例えば電源スイッチをやたらON、OFFしないとか、説明書とは違う操作をしないとか、
乱暴に扱わないとか、そんな基本的なことを守るだけで寿命は延びるものなんです。

「○年経ったら壊れるように設計する」なんてことは、
少なくても日本のメーカーは絶対にしません。
電子機器の元イチ技術者としてそれは断言できますし、
一つの製品には何人が関わって、どれほど紆余曲折があってから世に出るものであるか、
それを少しでも想像して頂いて、製品を大切に使ってもらいたいものです。


それでは、また次回に(^^)/

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幸せな結末 / 大滝詠一

短冊型のCDシングルの新品を買うとは全く予想していなかったな(^o^;)
この曲は私の、カラオケに行った時の定番の一つです:

幸せな結末.jpg
(このサムネイルをクリックすると大きな画像が開きます)

大滝詠一さんの結果的に最後のシングルとなった「幸せな結末」は1997年11月に発売され、
オリコンシングルチャートで2位に初登場(最高位)し、約97万枚を売り上げる大ヒットとなりました。
この時代のヒットシングルは殆ど、いや全部と言って良いほどCMかドラマとのタイアップで、
「幸せな結末」も「ラブ・ジェネレーション」(フジテレビ、木村拓哉・松たか子主演)の
主題歌として制作され、シングルとして発売されたものでした。

今月7日(2023年7月7日)が「短冊CDの日」だそうで、それに合わせて今回、
「幸せな結末」のシングルが再発売になりました。
8cmCD(=短冊CD)からマキシシングル(通常のCDと同じ直径12cm)に取って代わってから
23年以上経つのに、今も8cmCDって製造できるんだ!と私はまず、そこに驚きました。

そして今回のそのシングルには、オリジナルカラオケが追加されています。
「幸せな結末」とカプリング曲「Happy Endで始めよう」のオリジナルカラオケは、
大滝詠一さんが亡くなった翌年の暮(2014年12月)に発売されたベスト盤「BEST ALWAYS」の
初回限定盤(3枚組)に収録されていましたが、
今回シングルに初収録、さらに音源も最新マスタリングが施された上での発売となりました。

私は「BEST ALWAYS」は買わなかったのですが、「幸せな結末」のオリジナルカラオケは
ずっと欲しかったので、シングル再発を知ってすぐ購入しました。

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大滝詠一さんの楽曲やサウンドについてはもう、かなりの数のマニアがおられるようなので
ヘタなことを書いたらたちまち突っ込まれそうで怖いのですが、
「幸せな結末」のアレンジやサウンドは明らかにあの「A LONG VACATION」(=「ロンバケ」)
を踏襲しているのが一聴してわかりますね。
ん、「EACH TIME」じゃなくて「ロンバケ」、ね。

編曲:井上鑑 となっていますが、筒美京平氏が他の編曲家を使う時も殆ど自身の指示であった
ように、この曲でも殆ど大滝詠一氏の指示通りに井上鑑氏がアレンジを書いたのではないかな。
Aメロ後半に出てくるピアノや全体的なカスタネットの使い方はもろ「恋するカレン」ですし。

大滝詠一さんの楽曲の大きな特徴に転調がありますが、
「幸せな結末」では最後のコーラスで半音上がるだけで、
「Velvet Motel」や「カナリア諸島にて」、はたまた「ガラスの入江」(松田聖子)のような
Bメロで2転3転するような転調は使われていません。

ただ、コード進行でとても耳に残る箇所があるんですね。
Aメロ等に出てくる ♪今夜君は僕のもの~♪ がそれです。(キーはF)

通常だと Gm7→Am7→B♭→F、あるいは Gm7→Am7→B♭m6→F と素直に進行させるものが、
     Gm7→Am7→B♭dim→F とディミニッシュを使っているのが、珍しいパターンです。
ちょっと曖昧でモヤモヤ感が残る響きで、私が知る範囲ではこのようなコード進行はこの曲が唯一です。

大滝氏の作品でこのようにちょろっと変わったコードを持ってくることは他の曲でもあって、
例えば「風立ちぬ」(松田聖子、キーはB♭)のAメロ♪涙顔 見せたくなくて…♪
でのコード進行が B♭→Faug→B♭M7… と、普通だとF7を入れるところに
Faug(オーギュメント…構成音はF・A・C#)を使い、独特の響きを得ています。
そういったコードの選択は、やはり大滝氏の膨大な音楽データの積み重ねから得られたセンス、
それがすべてと思われます。

オリジナルカラオケを聴いていてふと気づいたことがありまして。

大滝詠一氏作の楽曲では、歌メロを間奏に流用する時に、
ギターのような音の立ち上がりが速い楽器よりも、
ストリングスやハモンドオルガン、木管のような立ち上がりの穏やかな持続音を使う場合が多い。
「幸せな結末」「恋するカレン」「カナリア諸島にて」「Velvet Motel」「風立ちぬ」
「四月のラブレター」「ガラスの入江」などなど、私が愛聴している楽曲(松田聖子ばかり!)
ではことごとくそうでした(^^)
「フィヨルドの少女」などは例外ですが…。

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それにしても大滝詠一さんのボーカルはいいですねー。
大多数の男性にとって声の音色がハッキリ出る音域を実に効果的に生かしていて、聴きやすい。
そのところ、ハイトーン過ぎて個性がどこかに行ってしまっているボーカルにはない魅力ですね。

大滝詠一さんも、自身へのインタビューによるとハイCまで出るとのことですが、
もしあの「君は天然色」のサビがオリジナルのキー通りにEになっていたら、
金切り声のような、切羽詰まったような歌声になっていたことでしょう。
…あ、その曲のサビ部分のオケが歌入れの前にハーモナイザー(=ピッチチェンジャー。
ハーモナイザーはアメリカの機器メーカーEVENTIDEの商品名)で全音下げられていた(E→D)
ことはよく知られていますよね。

「幸せな結末」はキーがF(最終コーラスではF#)。
歌メロの最低音はC、最高音はその1オクターブ上のEで、
やはり大多数の男性にとって最も歌いやすい音域と言えます。

また技巧的な此れ見よがしがなく(山下達郎さんの歌ってそれをやや感じてしまう…私だけ?)、
歌詞が大変聞き取りやすく、鼻濁音も明瞭です。
このようなボーカリストが大滝さん以外に殆どいないのは、なぜでしょうか。

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このシングル、最新マスタリングとのことで音質も向上しているかなーと期待したのですが、
うーん、それほどには良くはなっていない気がします。
全体のまとまりはいいのですが、肝心なストリングスの音色が…。
「ロンバケ」のような伸びが感じられなくて、音の動きが不明瞭に感じます。
全体の音数はさほど多くはないのに、各々の楽器の分離が今ひとつに思います。
それはマスタリングではなく元々のミックスによるものと思いますが…。
通して聴いた音質も、高域・低域ともにやや寸詰まりかな…。
しかしまた別の再生装置で聴くと、また感想は変わるかも知れません。

作詞の多幸福(おおのこうふく)って、大滝詠一さん自身のことですよね?
このシングルはカプリング曲を含め、一貫して「幸せ」でできているんですね(^^)

ところで大滝詠一さんの音楽って、シティ・ポップですか?
もしご本人にそれを伺ったら「いやいや、正統なポップスだよ」と言われる気がします(^^)


「幸せな結末」
作詞 : 多幸福
作曲 : 大滝詠一
編曲 : 井上鑑
レーベル : ナイアガラ(ソニーレコード)
CD番号 : SRDL4747
発売日 : 2023年7月7日

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