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愛のともしび / 欧陽菲菲

今回は久しぶりにB面曲です。 いつもうんと長くなってしまうので、今日はダイジェスト気味に(^^;)

雨の御堂筋.jpg

「雨の御堂筋」。
当時小学4年生だった私は、八王子(正確には秋川市、現在の東京都あきる野市)の東京サマーランド
に向かう乗用車の中でかけていたラジオから流れてきたこの曲に心を奪われました。
時は1971年11月。 もう大ヒットしていた頃だったんですね。
何よりも、欧陽菲菲さんの歌い方! 明らかに中国語っぽい発音、アクセントなのですが、
とにかくカッコいい! それまでの歌謡曲には無かったカッコよさ、でした。
特に好きだったのが ♪…誰か伝えて~~ぁ♪ のところ(^^)

それから間もなく、レコードを買いました。
当時のシングル盤は400円。 貨幣価値を考えると、きっと現在の1000円以上に匹敵するので、
小学4年生には高額な買い物でした。
なのでA面だけでなくB面も何度も何度も聴くわけで、「雨の御堂筋」のB面は「愛のともしび」。
A面に負けずキャッチーなこの曲を好きにならないわけがないわけで。

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「愛のともしび」は、橋本淳作詞、筒美京平作・編曲。
当時、すでに売れまくっていたコンビの作品ですね。
面白いのは、作詞者がA面とは違う(「雨の…」は林春生氏)のに、両曲とも歌詞の内容は
「(自分の前から消えた)男を探す」。
日本で大人気だったベンチャーズ歌謡と純粋な歌謡曲、
前年の大ヒット曲「希望」(岸洋子)と同じ路線のテーマでの競作
…だったのでしょうか。


「雨の御堂筋」がロックな8ビート歌謡であるのに対し、
「愛のともしび」はわずかにハネた、4ビートを内包した8ビートと言った感じで、
リズムから全く違っています。

コード進行は初っ端から筒美節に欠かせない6thが全開と言った感じで、
イントロから歌メロ部まで、どこにでも6thが顔を出しています。
逆に言うと、オーソドックスなコード進行でも適所に6thを加えると即席筒美風になると
言っても良いのでは、とさえ思ってしまいます。

この曲はキーがE♭m(変ホ短調)で、楽譜ではト音記号の次に♭が6つも付く難しいものなので、
Amに移調してコード進行を書いてみると…

イントロ: Dm6→Am→G7→C→E7
Aメロ: Am→Dm6→E7→Am→B7→E7
A'メロ: Am→Dm6→Am→E7→Am→A7
Bメロ: Dm6→Am→F6→E7 Dm7→G7→C→E7→Am

…と、6thの多用以外は極めてシンプルなもので、そのわかりやすさも当時の歌謡曲では
ヒットのための重要な要素でした。

でもわかりやすいからヒットするわけでもなく(この曲はB面ですが、ヒット性が高いとの判断で
書いてます)、筒美京平氏ならではの、歌手の歌い方が際立つようなアレンジ、
そして行方洋一氏ならではの凝った録音で上質な歌謡曲サウンドに仕上げられているのも、
売り上げを伸ばす要因であったのは確かでしょう。

例えば音作りに関しては…

ベースソロに続いて右から聞こえる、ミュートをつけたトランペット。
歌メロにはないメロディーで、続いてフルートと電気ピアノのユニゾン、
舞い上がるようなストリングスと次々に違う楽器が登場し、歌に導かれます。
そのトランペットには、まず反対のチャンネル(左)に半拍遅れた音が跳ね返り、
さらにそれより半拍遅れて中央からリバーブ音が…と、実に凝った演出が施されています。
これって、現代ならPC(DAW)で苦もなく出来る効果ですが、アナログ機材だけで行うには
テープレコーダーで音の遅れ時間を微妙に調整し、さらにその音だけにリバーブを…
と、かなり手の込んだセッティングと操作が必要になります。

初期の欧陽菲菲さんのボーカルにはフィードバックをつけたエコーが掛かっている作品が多い
のですが、改めて聴き直すとその効果にも実に味があるのがわかります。
それが最も顕著なのは「あなたは再び帰らない」(「雨のエアポート」B面)なのですが、
今回の「愛のともしび」でも100ms前後の遅れ時間のフィードバックが掛かっていて、
大きな効果を上げています。

当時のそういったエコー効果はサ行やタ行の子音を強調するのが一つの目的でした。
実際には欧陽菲菲さんに限らず、男女も関係なく多くの歌手の作品で聞かれたもので、
当時の私はそれがたまらなくカッコよく感じたものです。
80年代あたりからは逆に「耳につきやすい」との理由で子音を抑える方向になっていて、
そのためのディエッサー(de"S"er)と言うエフェクターが登場しそれが今も続いているので、
今の若い人が欧陽菲菲さん等の当時のレコードを聴くと逆に新鮮かも知れません。
私は今でもそのエコー効果が大好きです!

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テレビ出演していた時の欧陽菲菲さんは歌い方に多分にフェイクが入っていましたが、
レコードではそれはそれは素直な歌い方で、その違いも魅力でした。

欧陽菲菲さんは私が知る限りでは、日本で初めて大ヒットを出した中国語圏歌手です。
どうしても発音やアクセント、イントネーションなどは「いかにも」であり、
それが当時の多くの日本人には、まるでうまく話せない子供を見ているようで可愛い…
と言った感じを持っていたのではないでしょうか。
同じような印象が最もハマって大成功したのがアグネス・チャンさんかも知れませんね。

なので「愛のともしび」でも、2コーラス目の ♪…苦しみはしなかった♪ を
♪苦しみはしなかーたー♪ と歌っているのに、それがオカシイのではなく
何だか可愛らしく聞こえてしまっていたと思います。
当時の私もそうでした。

他にもザ行やダ行の音がタ行の音に聞こえたりと、きっと矯正されてもいたのでしょうが、
それが不完全だったのがかえって印象に残ったり魅力があったりと、
歌謡曲に今で言う意味とは違う多様性があり、新しく感じるものが次から次に出てきた、
面白い時代でしたね。


「愛のともしび」
作詞 : 橋本淳
作曲 : 筒美京平
編曲 : 筒美京平
レーベル : 東芝音楽工業
レコード番号 : TP-2517
初発売 : 1971年(昭和46年)9月5日(日曜日)

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今回は題目曲とは全く関係がありませんが、クイズをひとつ…。
次の音源は私が耳コピで作らせて頂いた既存曲のカラオケです。
そのタイトルと歌った歌手をお答え下さい。
知っている人はすぐわかる、そうでない人はやはりわからないと思うので、
ヒントは無しです:


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