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復活!第一段:早春の港 / 南沙織 パート2

お久しぶりです! とは言ってもちょこちょこと記事は出していましたが(^^;)

今年も3月となり、思えばこのブログを始めたのが13年前の3月。
「ブログ、やめます」と宣言した後も、気づけば書くネタを無意識に探していたり、
「こんな事に気づいた! 皆に知らせたい!」などと考えるクセが直らず、
あ、これはやっぱり書きたいんだな…とようやく自分で認めるに至ったわけでした。

確かにまだ記事を書いてみたい曲もありましたし、数ヶ月前、光栄な事にある有名な
音楽評論家の方からこのブログを読み評価して下さっている旨を直々にメールを頂き、
先述の自分の気持ちとも合わせ、意固地に「書かない」と決め込む理由もないな…と思い、
今日からまた再開する事に致しました。

日々仕事をしつつ、音楽制作も行いつつ…との生活ですので、やはり以前のように毎週
更新とはいきませんが、最低でも月に一度(できればそれ以上)更新していくつもりです。
時々クイズでお茶を濁すこともあるかと思いますが、
良かったら皆さま、これからもお付き合い頂けると嬉しいです。

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今後の進め方について…。

これまでに採り上げた事のない楽曲について書かせて頂くのが基本なのですが、
一度記事を書かせて頂いた楽曲についても時々、再度書く回を設ける予定です。

と言うのは、特にこのブログの初期の記事を読み返していて「この頃知らなかったけど
今はこんな事もわかっている」とか「もう少し細かく書きたい」と思う事が多々あるから、
なんです。
また、今と以前とでは曲そのものに対する感じ方も変わっているものもありますし…。

なので、「○○△△ パート2」などとタイトルをつけ、最初に書いた記事を
振り返りつつ再度考察を試みた記事を書くつもりですので、ぜひ読んでみて下さい。
今回はそれでいきます!

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では再開第1回目、通算601回めの記事は、やはりこの曲。
「早春の港/南沙織」です。
早春1.jpg
(ぽぽんたはこの左側の写真が大好きです(*^_^*))

今でこそ

筒美京平氏は自身も認めている通り、当時の洋楽からアイディアを得た曲を書く事
が殆どであると言ってよく、どの曲にも「元ネタ」が存在するんですね。
私はこの曲、元ネタはカーペンターズの「トップ・オブ・ザ・ワールド」だと思います。

Aメロでクルクルとコードが替わりBメロではそれが1小節ごとになったり、
Aメロでは低音域、Bメロでは高めの音域と分けて効果的に盛り上げている歌メロ…
と言った事を含めた全体の曲構成、
ポップスでは珍しくスチールギター(ハワイアンギター)がイントロや歌中の
オブリガートに使われている事、
そして総合的な雰囲気…と、共通点が多いんです。

因みにカーペンターズの「トップ・オブ・ザ・ワールド」には、
1972年6月に発売されたアルバム「A SONG FOR YOU」に収められたアルバムバージョン、
そのアルバム発売より1年半後に発売され全米1位になったシングルバージョン、
そしてCD時代になって作られたリミックスバージョンとありますが、
スチールギターが使われているのはアルバムバージョンのみで、
シングルバージョン以後は通常のエレキギターが同じパートを演奏しています。

すみません、基本カーペンターズのファンなものでついでに例外を…。
カーペンターズのアルバム「THE SINGLES 1969-1973」のCD-4(4チャンネルステレオ)版
レコードには、オケがアルバムバージョン、リードボーカルがシングルバージョンで
ミックスされたバージョンが収められています(^^)

「早春の港」の原曲「ふるさとのように」が収められたアルバム「早春のハーモニー」
が発売されたのは1972年12月ですので、
その制作は同年の秋と考えられ、ちょうど日本で独自にシングルカットされた
「トップ・オブ・ザ・ワールド」のヒットと重なる時期ですので、
カーペンターズのファンでもあった筒美氏はアルバム「A SONG FOR YOU」が発売されて
間もなく同曲を知り、ご自分のネタ帳に入れていたのでしょう。
早春2.jpg

久しぶりにやや楽理的なお話を…。

このブログでも何度となく「筒美京平は6thを多用する」と言った事を書いてきましたし、
それを指摘する評論家やミュージシャンも何人かいますが、
南沙織さんへの提供曲では、それが当てはまらないものが多いんですね。

記号ではⅣ、即ち「ドファラ」の和音に6thを追加すると「ドレファラ」の4音となります。
実際に試すと分かりますが、明るい響きのⅣに6thを加えると、何となく哀愁を帯びて、
また使われ方によってはそれが日本的な響き、ハーモニーに感じられます。
筒美氏作品に限らずとも、様々な歌謡曲でそれは応用されているので、
皆さんもきっと耳馴染みの響きと思います。

しかし今回の「早春の港」を含め、南沙織さんの楽曲には、そういった使い方の6thが
とても少ない(皆無ではないですが)んです。
代わりに7th、メジャー7th、また特殊な○-5(-5は実際にはアルファベットの右上に小さく
書かれる)と言ったコードが使われる事が多く、それは尾崎紀世彦さんの筒美氏作品でも
同様で、そうする事でより洋楽っぽさが引き立つようになるんですね。

「早春の港」のAメロのコード進行は、(原キーがBで難しくなるのでCに上げて書きます)

C → E7 → Am → Fm6 → Em7 → Am7 → Dm7 → G7

と7thが多用されているのがわかります(Amの次のFm6は機能がまた違うので、
そのあたりはまたいずれ書きますね)。

洋楽っぽいコード進行はそれとはまた違うものが2回目の間奏にも使われています:

G7 → C/G → F/G → G7

これはベース音を固定してハーモニーだけを次々に変えていく手法で、
景色がどんどん変わるのに地に足がしっかり着いているような安定感を覚える響きです。
F/GはベースのGとコードのFは不協和音の関係になりますが、その響きも日本人には
バタ臭いものに感じられるのではないかな(クラシックやジャズでも頻繁に使われる
コード進行です)。

当時はよく「音楽は洋楽ばかりで歌謡曲なんて聴かないけど南沙織は聴く」などと言う
若い音楽ファンがいたものですが、それにはそういった「シャレた」コード進行も
大きく影響していたと思われます。

因みにエンディング(コーダ)のコード進行も

C → F/C → C → F/C → Cmaj7

と、ベース音を固定してハーモニーだけ動かし、最後にメジャー7thで締めると言った
カッコいい終わり方になっています(^^)


この曲を含め、南沙織さんのボーカルを聴いていてつくづく感じるのが、
その音感の良さです。

自分でピアノやギターなど、楽器を弾く人が歌う時によく感じられる特徴の一つに、
それまでのメロディーの音から離れた音に移る時に、その音にピタッと「当たる」
事があります。

例えばこの曲のBメロの頭 ♪好きとも言わないし…♪ の「す」で、しゃくる事なく
ピタッと音が合っていますよね。
普通の人だと、その音より少しだけ低い音程から発声し始めてから音を合わせる、
言い換えると発声を始めてから正しい音を探ってようやくその音に達する、
そういった歌い方になってしまう事が多いんです。

そうならずにピタッと音を決めている箇所が、この曲だけでも何箇所もあります。
それは明らかに音感が優れているからですが、
南沙織さんが何か楽器をやってるって、当時の雑誌か何かに書いてあったっけ?
そうでないとすれば、出身地が沖縄と言う事で、幼い頃から洋楽、とりわけ
アメリカの音楽を常々耳にしていて知らず知らずの間に音感が鍛えられた、
と言う事かも知れませんね。


オケのサウンドは、筒美氏らしくストリングス中心のイージーリスニング的な趣です。
歌謡曲のストリングスはとにかくバイオリンだけが目立つサウンドが多いのですが、
この曲ではチェロまでバランスよく、しっかりと耳に届くのが印象的ですね。
弦を弓で擦る時の「ゴッゴッ」と言った感じの音もしっかりと聞こえるので、
楽器のかなり近くにマイクをセットして録音されているのかも知れません。

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と言う事で、ブログ復活第1回目はここまでです。

結局、背景のデザインからして全然変わっていないですし(^^;)
内容や書き方も全然変えていませんが(いや、変えられないのかな)、
これからもこのような調子でつらつらと書き、更新していきます。

では、これからもよろしくお願い致します(^^)/

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