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赤い風船・ひとりっ子甘えっ子 / 浅田美代子(続き)

やっぱり1週間遅くなってしまいましたm(_ _)m


前回、一つ大切な事を書き落としていました。 それは…

「赤い風船」の歌メロの音階は、このブログでも何度か書いてきた「四七抜き(ヨナぬき)」の
ペンタトニック(1オクターブ中5つの音だけを使って作られている音階。この場合ド・レ・ミ・
ソ・ラの5つ)が大部分で、
「ひとりっ子甘えっ子」の歌メロは全音階(ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シの全部を使って
作られている音階)で書かれている事、です。

四七抜きで作られたメロディーは素朴でどこか和風なイメージであるのに対し、
全音階だとモダンで洋楽的なイメージになりやすい傾向があります。
前回説明したボーカルのハモリについてもそうですが、
「赤い風船」が大ヒットの成績を収めたので、同じ路線を踏襲しつつ、音楽としてさらに
充実したものを届けたい…との筒美氏の思いがあったのではないでしょうか。
そのあたり、南沙織さんの「17才」から「潮風のメロディ」への流れに似ていますね。

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「赤い風船」「ひとりっ子甘えっ子」が収められたCDはいくつか存在しますが、
私は「赤い風船」(CD選書、1991年)、「浅田美代子ベスト・コレクション」(1985年)、
「GOLDEN J-POP/THE BEST 浅田美代子」(1998年)の3枚を所有しています。

そのうち両曲とも収められているベスト盤2つについて、少々音質等の比較をしました。
使用した機器は、CDプレーヤーがソニーCDP-337ESD、ヘッドホンがソニーMDR-CD900STです。

「浅田美代子ベスト・コレクション」を旧、「GOLDEN J-POP…」を新としますね。

まず違うのが音量。
旧は、同時に発売された天地真理、南沙織、キャンディーズの同シリーズと比べ
ダントツに音量が大きく、そのせいか購入当時(発売後すぐ買ったので1985年の春です)、
「すごく音がいい」と感激した記憶があります(勿論その曲だけでなく、1枚全体を通して)。
今思うとそれは錯覚に近いのかも知れませんが(^^;)

さらに、音楽メディアとしてCDが発売され始めて何年かの間、エンファシスがかけられ
雑音の低減を図ったものが多く(カセットに使われたドルビーと似た考えの機能です)、
そのためと思われる音質の劣化が感じられる事が多かったのに対し、
旧ではそれがかかっておらずストレートな音色だったのも好印象の要因と思います
(当時のCDプレーヤーでは、エンファシスのかかったCDを入れると「ENPHASIS」なる
表示が出たものです)。

新では音量(正確には音圧)がさらに上がっています。
1998年あたりは「音圧戦争」の初期の頃で、少しでも音量が大きく感じられるCDを、
とエンジニアが躍起になり始めた頃です。
それが新にも反映しているわけですが、旧と比較すると、
楽器の分離感、それぞれの音の立ち上がり感などは明らかに向上しているんですね。
旧では何となく溶けていたような音が、新ではエッジを持って立ち上がっている、
そんな感じに聞こえます。

ボーカルについても同じで、旧よりも近く、子音までハッキリと聴き取る事ができます。

それがいいか悪いかは聴く人の好みで分かれると思いますし、例えば「ひとりっ子…」
のストリングスは旧の方が雰囲気があるように私は思いますが
新には細かい音まできちんと聴かせようとする配慮を感じる事ができます。
旧は、まだCDの黎明期のリリースと言う事もあり、音を積極的に変化させたり
向上させたりは除外しあくまでもマスターテープの音のイメージをそのまま…
と言った感じを目指していたのでしょう。
…と言っても私もマスターテープの音を直に聴いた事などないので、あくまでも想像ですが。

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「赤い風船」の各楽器の定位は:

左: アコギ(コード演奏) 第1バイオリン
左中間: フルート(2本)
中央: ドラムス ベースギター ビオラ 12弦アコギ
右: 電気ピアノ 第2バイオリン チェロ

ストリングスは多くの場合、左から右へ第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ、チェロと
並べて定位させる事が多いのですが、
この曲のエンジニアだった内沼映二氏は第1バイオリンを左、第2バイオリンを右に置く
ミックスが多いんです。
その理由として内沼氏は「左右に安定した広がり感を得られる事」を挙げています。


「ひとりっ子甘えっ子」の各楽器の定位は:

左: 電気ピアノ アコギ(アルペジオ演奏)
左中間: 第1バイオリン
中央: ドラムス ベースギター 鍵盤ハーモニカ
右中間: 第2バイオリン ビオラ
右: ハープ チェロ アコギ(ストローク演奏)

前回も少し書きましたが、イントロでは左の電気ピアノと右のハープが空間でミックスして
和琴のような音色になるのが面白く、興味深い現象です。

ストリングスはバイオリンが「赤い風船」よりもやや中央寄りに定位し、
存在感を強めている印象を受けます。


「ひとりっ子甘えっ子」については、1974年11月に発売された「ヒット全曲集」(SQ4チャンネル)
で再ミックスされており、
楽器の定位はもとより、ボーカルのテイクが明らかにオリジナルとは違うものであるのが
聴き取れます。
そちらの方がややリラックスした歌い方で、ハモリが特に1コーラス目でやや崩れている(?)
ので、もしかしたら本番ではなくテスト録音のテイクかも知れません。
YouTubeにその音源がアップされているようなので、興味がある方は聴いてみて下さい。

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「マスタリング」なる言葉も今はかなり知られているようですね。
「今度のCDは新しくマスタリングしてあるから音がいい」などと書かれた記事も目にします。

マスタリングとは、オリジナルのマスターテープからまずストレートにデジタルのメディアに
コピーし、ソフトでノイズを除去したり、音圧を調整したり、音質を調整したり、
アルバムの場合はさらにそれらを全曲通して違和感を覚えさせないように調整したりする作業
の事ですが、その技術や使われるソフトや機材など、年々進歩していて、
50年前の音源でもまるで数年前に録音したようなピカピカの音にする事も可能になっています。

ただ、これは個人的な意見ですが、あまりきれいな音になり過ぎていると、
その曲の世界に入り込めない…なんて事もあるように思うんです。

だから何、じゃ悪い音にマスタリングすればいいの?
と言われても困りますが(^^;)、
もし「あの頃の気分に戻りたいからこの曲を聴きたい」と思うのなら、
それこそ最新のCDや配信の音源でなく、当時のレコードやカセットで聴くのが最良、
かも知れません。

これまではLPの時代になればみんなLP、CDが出てきたら誰でもCD、
そして今はサブスクや配信で簡単に聴く…と変遷してきましたが、
一度は死んだと思われたレコードやカセットテープなどが少しずつ息を吹き返しているのは、
そういったメディアの方が魅力的に聴こえる音楽もあると認知されてきたから、
と思うんですね。

私は初めて自分の小遣いで買ったLPレコードが「赤い風船/浅田美代子」でした。
小学校6年(1973年)の夏でした。
1991年にCD化されたので買いましたが、
その後でLPレコードの方を聴いた時「やっぱりこの音なんだよなー」と、
どこかホッとしたのが今も忘れられないんですね。

もしCDや配信で購入した曲が「この音、何か違う」と感じたら、
レコードやカセットなど、アナログメディアにアクセスする事をお勧めします。
オープンリールも雰囲気があっていいですよ(^^)

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