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わたしの城下町 / 小柳ルミ子

↓ このジャケ写は小田原城で撮影されたそうです(^^)

わたしの城下町.jpg

「わたしの城下町」は小柳ルミ子さんのデビュー曲として1971年4月に発売され、
オリコンで同年7月26日付から10月11日付までの12週に渡って1位となり、
同100位内に51週もランクされ、134.3万枚を売り上げる大ヒットとなりました。

当時、国鉄(現JR)が繰り広げていたディスカバー・ジャパンのキャンペーンに
乗る形でヒットしたようですが、ロングヒットとなったのはやはり、
楽曲と歌唱の良さによるものでしょう。


小柳ルミ子さんは歌手デビューの前にNHK連続テレビ小説「虹」に
「かおる」の役名で出演していて、体が弱く学校を休みがちだった私は
そのドラマを毎日のように観ていました。

なのでそのドラマが終了してほどなく小柳ルミ子さんが歌手デビューし
テレビで歌っている姿を観て「かおるが歌ってる!」と驚いたのを憶えてます(^^;)


小柳ルミ子さんは、「虹」の収録現場のメイク室で初めてこの曲の譜面を渡され、
初見で ♪ドミミドミ ファララファラ…♪ と読み歌っていると
「なんてきれいなメロディーなんだろう」と涙があふれてきたそうです。

その時には歌詞がまだなく、「島原の子守唄風」とだけ書いてあったそうです。


宝塚音楽学校出身と知れていたからか、特にレッスンも音域のチェックもなく
いきなりレコーディングに連れて行かれ、一発でOKが出たそうです。

その後の楽曲でも同じような様子だったので、やがてレコーディングの現場では
「テイクワンのおルミ」「初見が利くおルミ」と重宝がられたそうです(^^)

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作曲は演歌、リズム歌謡、ロックと実に幅広い作風を持つ平尾昌晃氏。

作詞はそれまでの作品はどれも洋風で、この曲で
初めて和風に挑戦したと言う安井かずみ氏です。

そして編曲は渡辺プロお抱えのベテランアレンジャーである森岡賢一郎氏で、
氏はこの後、小柳ルミ子さんの初期の楽曲の殆どを手掛ける事になります。

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「わたしの城下町」は、キーは転調なしの Am 、全体の構成は2ハーフで、
各コーラスは A・B・Cと分ける事ができます(ハーフはB・C):

Aメロ: ♪格子戸を…わたしの城下町♪
Bメロ: ♪好きだとも言えずに 歩く川のほとり♪
Cメロ: ♪行き交う人に…心は燃えてゆく♪

歌を聴いていて驚くのは、1コーラス目とハーフの Cメロを
途中ブレスなしに一気に歌っている事です。
肺活量が大きく、また正式な発声法を会得していたからこそ
成し得た歌唱と言えます。

また、小柳ルミ子さんはファルセットで歌う部分が多いのですが、
よく聴くと低音域から中音域にかけては地声で、
地声とファルセットとの境目がなめらか且つ自然で、それは即ち
ファルセットでも地声と同じほどの声量を保っている事でもあり、
これも正式な発声をマスターしている強みと思われます。


メロディーはソだけがない、ラシドレミファの6音で出来ています。

全体の雰囲気は和風ながら、リズムは8ビートで
ロックにも通ずるものがあります。
静かなイメージながらもロックの躍動感も内包している事は、
息の長いヒットとなった一因でしょう。


コード進行は演歌に近い、単純なものですが、
Bメロの ♪好きだとも言えずに…♪ の「とも言え」では Dm6、
つまり 6th付きのサブドミナントが使われていて、
その哀愁のある響きはその後の小柳ルミ子さんの楽曲である
「お祭りの夜」「雪あかりの町」「京のにわか雨」「漁火恋唄」
などでも使われ、小柳ルミ子さんの初期の特色ともなっています。


「わたしの城下町」のレコーディングは、当時開業直後で
最新鋭の機材が揃えられていた東京・目黒のモウリスタジオで行われました。
(「飛んでイスタンブール」の回を参照して下さい)

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「わたしの城下町」に使われている楽器とその定位は:

左: ハープシコード エレキギター

中央: ドラムス ベース ストリングス

右: 12弦ギター ビブラフォン


Aメロでは、歌メロを追うようにハープシコードと12弦ギターが
ユニゾンでオブリガード(対旋律)を演奏し、
ハーフ前の間奏ではハープシコードと12弦ギターがメロディー、
ビブラフォンがオブリガード…と使い分けられています。


右のビブラフォンは、イントロや間奏、エンディングでは
キンキンとした固い音で演奏されていますが、
これはそのパートだけ固いマレットを使っているか、
あるいは小型の鉄琴がプラスされているかのいずれかなのですが、
今ひとつ、どちらか判然としません(^^;)


ストリングスはチェロ抜きであるようで、
Cメロではトレモロ奏法によって切迫感のようなイメージを
表現しています。


ハープシコードは、1960年代後半から1970年代の歌謡曲やポップスに
よく使われていますね(^^)

ハープシコードはイタリア語ではチェンバロといい、
ピアノが開発される以前に隆盛を極めた鍵盤楽器です。

ピアノがハンマーで弦を叩く事で音を出しているのに対し、
ハープシコードは弦を引っかくような仕組みで音を出しているため、
音量が小さく、また鍵盤を叩く強さが音の強さに反映しないと言う弱点がありますが、
その独特の音色は他の楽器との相性も良いので、
歌謡曲などでも多用されたんですね。


リズム楽器はドラムス以外には使われていないのですが、
ビブラフォンがパーカッション的な役割もしているようです。


全体のハーモニー感は、左のエレキギターのコードカッティングと
右のビブラフォンとで過不足なく出しています。

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「わたしの城下町」の B面は山上路夫氏作詞の「木彫りの人形」です。

こちらは3コーラス構成で、2コーラス目に続いてセリフが入ったり、
セリフの時と3コーラス目との2回で半音上に転調したりと、
「わたしの城下町」よりも音楽的に凝った作りとなっています。

その歌唱には「泣き」が感じられ、歌詞をそのまま解釈すると他愛ないものが
小柳ルミ子さんの淡々とした、しかし終盤では力強い歌い方によって
意味ありげな、悲しい作品に仕上がっています。

個人的には、「わたしの城下町」が当時、あまりに毎日、自然と耳に入るので、
「木彫りの人形」の方を好んで聴いていた記憶があります。

さっき、「わたしの城下町」を聴き直すついでに「木彫りの人形」も聴いていて
何だか妙に感動してしまいました(^^;)

「わたしの城下町」が B面を含め最強のシングルだったと再確認しました(^^)


「わたしの城下町」
作詞 : 安井かずみ
作曲 : 平尾昌晃
編曲 : 森岡賢一郎
レコード会社 : ワーナーブラザーズパイオニア
初発売 : 1971年4月25日

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コメント 13

Ray

私の城下町のオカラ、早く入手しなくちゃね。
by Ray (2012-05-14 13:23) 

ひろ

こんばんは。
この歌をワンテイクで仕上げたルミ子さんは凄いですね~。
まぁ~上手な方ですからね~。
今でも歌えるこのメロディーも歌詞もいいですね~。

ジャケットは他にもあるのでしょうか?
ユウツベに「木彫りの人形」が大きく「わたしの城下町」が小さく書かれた違うジャケを見かけました。

ルミ子さんの歌は他にも好きなのが結構あります。
逢いたくて北国へ・冬の駅・星の砂・恋の雪別れ…他
by ひろ (2012-05-14 21:12) 

ぽぽんた

Rayさん、こんばんは!

…ってか、「小柳ルミ子ゴールデン☆ベスト orikara」が発売されればすべて丸く収まります(^^)

by ぽぽんた (2012-05-14 23:34) 

ぽぽんた

ひろさん、こんばんは!

当時はまだ録音技術への依存度が低かったので、ワンテイクでこなしてしまうような歌手は
きっと他にもいた事でしょう(^^)

「わたしの城下町」のジャケット(歌詞カード)は2つ折りになっていて、ひろさんが見たのは
その裏面の画像だったのでしょう。 「お祭りの夜」も同じような作りです。

私も小柳ルミ子さんの曲は好きなものが多いんです。 これからの季節は「ひとり囃子」や
「ひと雨くれば」がぴったりです(^^)

by ぽぽんた (2012-05-14 23:39) 

青大将

ぽぽんたさん・こんばんは。 「木彫りの人形」聴いて、虚しくなりました。 ジャケット裏の歌詞を目で追うと、余計に。(-.-) ペアで売られてる物は、ペアで買わなきゃいけない、そんな気にさせられました。 魂持ってたら、堪んないですね。(^^; デビュー盤なのに、見開き裏ジャケ写の顔は、既に20代半ばほどの貫禄を感じてしまいます。 何か10代には見えません。 「わたしの城下町」は、 6歳の頃の曲ですが、もう、記憶はバンバン 有りますよ! とにかく、当時は「また逢う日まで」と、この曲のオンパレードだった様な気がします。 ウチの妹がよく歌ってて、表で歌ってると、通りすがりの、何処かのお姉さんが、「上手だねー」と、妹の頭を撫でて行った事を昨日の様に憶えてます。 特にレッスンもせずにいきなりレコーディング・スタジオに連れて行かれたにしては、もうベテランの域を感じさせるほど、落ち着き払った、安定感のある歌唱です。 しかも、凄く上手い! あ、今思い出しました。昔、元旦那とラジオの生放送に出演した時、「木彫りの人形」には、御本人も思い入れが有る、好きな曲の様な事言ってましたね。
72年のレコード大賞で、発表前のCMタイムの時、審査員長の服部良一氏に、壇上で《君は、歌謡大賞を穫ったから、レコード大賞は・・・いいか。》 と言われ、《ああ、私は穫れないんだ》と思った逸話も、この時初めて知りました。 DJがこの話を振った時、「よくぞ聞いてくださいました」と言ってたぐらいだから、当時は、よほど納得出来ない出来事だったのかも。 しかし、同時にライバル曲「喝采」は、やはり名曲だとも絶賛しておりましたよ。街頭インタビューで、「誰が大賞穫ると思いますか?」と、マイクを向けられた人々は、大方が 小柳ルミ子と、「瀬戸の花嫁」を推して呉れて居たとも語ってました。

「わたしの城下町」ジャケット記載の宣伝コピーの文面からも、 いかに期待され、デビューしたのか見て取れます。
by 青大将 (2012-05-15 19:34) 

ぽぽんた

青大将さん、こんばんは!

私も当時、「木彫りの人形」を聴いていて可哀想になってしまったのを覚えています。
聴いているとその歌詞の内容の風景がまざまざと浮かんで来るんです。

デビュー当時からずっと思っていたのですが、小柳ルミ子さんって実年齢よりもずっと
上に見えていましたよね。 落ち着きが感じられるからかも知れませんが、「十五夜の君」を
歌っていた頃が21歳だったなんて、今考えても信じられない(^^;)  プラス5歳でも
いいくらいです。 歌唱力については悪く言う人はいませんが、ただ巧いだけでなく
声質のためか情感が豊かなんですね。 最近の歌手は技術ばかりで情感がなくて…
「木彫りの人形」は小柳さんもお気に入りだったんですね。 それを知って嬉しいです(^^)

歌謡大賞、レコード大賞のウラはあれこれあったようですね。 1972年のレコ大の時、
子供だったからか「喝采」の受賞に別に疑問はなかったのですが、大人になって
ある程度の分別がつくようになると、やはり発売されてたった3ヶ月で大賞と言うのは
ちょっとおかしい、と思ったりします。
そのレコ大のビデオを観ると、確かに街頭インタビューで「小柳ルミ子」と言う人が
多いですね(^^)

小柳ルミ子さんはワーナーからの初めての歌謡曲歌手だった事もあり、とても期待され、
プレッシャーも大きかったと思いますが、今思うととても安定した歌手でしたね(^^)

by ぽぽんた (2012-05-16 00:05) 

Tama

72年のレコード大賞は確かに言われてみると疑問なところはありますね、この年ばかりじゃないですけどね怪しいのは、喝采はもちろんあの鐘を鳴らすのはあなたもですが、両方とも名曲だとは思いますし、最近のレコード大賞よりかはまぁ納得できないことはないかなとも思います、70年代の大賞は大体みんなが知っている曲だったんじゃないかと思いますがいかがでしょうか?
小柳ルミ子さんは歌唱力がきちんとしているので、何を歌っていても安心して聴けますね、自分としては京のにわか雨と逢いたくて北国へや、折鶴とか心もよう辺りがお気に入りです。
by Tama (2012-05-16 09:00) 

ぽぽんた

Tamaさん、こんばんは!

そうですね、仰る通り1970年代あたりだと、大賞はおろか、金賞や最優秀歌唱賞等を獲得した
楽曲も、ほぼ国民全体的に知れ渡っていましたよね。 私もここ10年くらいの大賞曲は、
正直なところ全然わかりません。 私の中では全然ヒットではないですし(^^;)

小柳ルミ子さんの歌は、かなり高度な曲でも安心して聴いていられましたね。
最近はやや歌唱力が後退気味で、ご本人も気にしているようです。

by ぽぽんた (2012-05-16 23:27) 

まるいち

ぽぽんたさん、こんにちは!
この曲は純和風な落ち着いた曲というイメージしかなかったのですが
改めて聞いてみるとBメロでは16ビートも感じられたりして
流れがスムーズなので気づかなかったんですが、決して単調な曲ではなかったんですね。
また、確かに初期の小柳ルミ子さんのイメージとして
しっとりとした哀愁感のあるサブドミナントのm6は
まさにぴったりハマっていたと思います。
それにしてもデビュー曲で初見でテイクワンで130万枚を超えるヒットって
改めてすごい人なんですね~(^^)
ところで「木彫りの人形」初めて聞きましたが、これまたすごい曲ですね~。
私は小柳ルミ子さんは歌も上手だし、決して嫌いではないのですが
当時、この人何となく怖い…という苦手意識があったんです。
その理由がこの曲を聞いて何だか少しわかったような気がしました。
彼女の声にはどこか「念」のようなものが感じられて
それがちょっと怖く感じたんだなと…
この曲は素朴で淡々とした中に、人形の「念」が生々しく語られていて
その山上路夫さんの詩のパワーもすごいのですが
人形とルミ子さんの「念」がシンクロしているような…
いや、でもたぶん私だけの思い過ごしなんだと思いますが…(^^;)
とにかく、強く印象に残る曲です。
by まるいち (2012-05-21 19:00) 

ぽぽんた

まるいちさん、こんばんは!

小柳ルミ子さんについて「怖い」と感じるのは、何となく納得できます。 芸事に対する執念は
人一倍強いものを持っている人だと思いますし、自分に厳しい分、他人に対しても
厳しい面があるのを感じ取れてしまうからではないかな。

「木彫りの人形」の歌詞に関しては、私は人形の念というよりも擬人法であると思うので、
怖いと感じた事はないんです。 と言うか、人形の念の歌であると解釈すると
オカルトチックになるので(^^;)、私はロマンチシズムを大切にしたいと思います(^^)

by ぽぽんた (2012-05-21 23:03) 

まるいち

ぽぽんたさん、こんにちは!
そうですよね、怖い曲なわけないですよね、変なこと言ってすみません…(^^;)
私も「木彫りの人形」は素朴なメルヘンの名曲として思うことにします!


by まるいち (2012-05-22 17:52) 

ぽぽんた

まるいちさん、こんばんは!

いえいえ、音楽にはどんな解釈があってもいいと思うし、歌詞によってそれが自由にできるのも
歌謡曲の素晴らしい点です。 私は昨夜はあのようにお返事しましたが、まるいちさんの
解釈は何だか新鮮でした。 ご自分の感性、ぜひ大切にして下さいね(^^)

by ぽぽんた (2012-05-22 23:12) 

ぽぽんた

卓さん、ここでもこんばんは!

そうですね、子供心ながら当時の小柳ルミ子さんの人気が凄かったのは憶えています。

お母様の影響で芸能界入りしたのは確かであるようですね。 それに応えるように
宝塚音楽学校を主席で卒業…とは、きっともの凄い努力家なのでしょう。

「来夢来人」、いいですね(^^) 筒美ー萩田コンビの、桜の季節には聴きたくなる1曲です。
あと、中島みゆきさんが作った「雨…」もいいですね(^^)

今ではすっかり権威のなくなってしまったレコ大ですが、当時は絶大な力があったようですね。
子供の頃は純粋に観ていたのですが…大人は悲しいですねぇ(T_T)

by ぽぽんた (2012-05-27 20:22) 

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