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青いリンゴ / 野口五郎

自己都合で一日遅れになった事、お詫び致しますm(_ _)m

青いリンゴ.jpg

「青いリンゴ」は野口五郎さんの2枚目のシングルとして1971年8月に発売され、
オリコン最高14位、同100位内に24週間留まり19.2万枚の売り上げとなりました。


野口五郎さんは、デビュー曲が1971年5月に発売された「博多みれん」と題された
演歌であった事は有名な話ですね。

その曲のキャンペーンで酒場まわりをしていた時、酔っぱらった客に酒をかけられ
ただ一つのの衣装であった白いスーツが汚れ、自宅で洗い次の日にまた着た、
と言ったようなエピソードも残されています。

当時、野口さんは弱冠15歳であったのに、後にデビューした西城秀樹さんや
郷ひろみさんについては想像もつかないような、演歌歌手ならではと言えるような
ご苦労をされていたんですね。


その「博多みれん」は全くヒットせず、2曲目で歌謡ポップスに転向して
この「青いリンゴ」の発表となるわけですが、特にサビの部分で
所々演歌の唱法の特徴であるコブシを感じる事ができますし、
その後の楽曲でも時に「クドい」と言われる振幅の大きいビブラートに
演歌歌手だった片鱗が見える気がします。


「青いリンゴ」は作曲が筒美京平氏、編曲が高田弘氏。 翌年に麻丘めぐみさんの
「芽ばえ」「悲しみよこんにちは」のヒットを出したコンビですね(^^)

歌に導入しやすくするなどの理由で、イントロなどに歌メロの一部が
採り入れられる事がよくありますが、
そのお二人で作る作品では、歌のメロディーとイントロ・間奏・後奏の
メロディーが全く別物である事がほとんどなんですね。

「青いリンゴ」ではそれに加え、歌メロではコードに対するメロディーが素直で、
コードのスケールから外れた音、即ちテンションが非常に少なく、まるで
ピアノの指練習のような滑らかな音の動きで、それに施されたアレンジは
オブリガード(歌の合間に入る楽器音のメロディーの事です)が極力排され、
歌メロの良さを生かそうとする狙いが感じられます。

そして高田氏らしい、ストリングスが活躍するアレンジで、Aメロでの
ピチカートやサビに入る時の駆け上がりなど、ストリングスの聴きどころを
多く採り入れ、しかもとても艶やかな音色で、これぞ70年代の歌謡曲!
と言った感じですね(^^)

イントロ・間奏・後奏・裏メロとほぼ全体で聞こえてくる、ミュートを
つけたトランペットの音色が曲全体のイメージを作っていると同時に
アップテンポな流れを引き締めています。

そして最後はコードが B♭m に対してピチカートで C 、即ち9thの音で締めくくり、
まだ続きがあるような印象を作っています。
ただそういう音の使い方、つまり9thを追加して終わる事自体は、
歌謡曲ではわりと常套手段です(^^;)


レコードにするためのミックスでは、低音成分が多い楽器や音の大きな打楽器は
中央に定位させる事が多いんです。
それは、左右のどちらかにそういった音があると、レコードの溝の片端が
大きな波を打ってしまい、それが針飛びの原因になるからなんですね。

なので、ベースはまず中央ですし、ドラムスも中央である事が多いのですが、
この「青いリンゴ」では明らかにキット全体が右寄りに定位しています。

それはこの曲以前の時代によくあった事で、ベースが左でドラムスが右に
定位している曲もあるほどです。
その頃はまだ、レコードに乗せるカートリッジ(ピックアップ)の針圧が
重くて、多少溝のうねりの大きいレコードでも問題無かったんですね。

レコードプレーヤーの性能が良くなり、「レコードを傷めない」ために
針圧が軽くなり、そのため今度はレコードによって針飛びが起きやすくなった
という理由でミックスも変わっていったという側面があるんです。

なので、「青いリンゴ」のミックスはわりと古典的な、しかしそろそろ
次世代に変わっていくような過渡期にあったものの一つと言えると思います。


野口五郎さんにとって大きな転機となったこの曲ですが、
その成功の最大の要因は筒美京平氏による、野口さんの
イメージを的確に表現したメロディーであった気がします(^^)


それにしても、なぜ演歌でデビューしたんだろ?


「青いリンゴ」
作詞 : 橋本淳
作曲 : 筒美京平
編曲 : 高田弘
レコード会社 : 日本グラモフォン(ポリドール)
初発売 : 1971年8月10日

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コメント 10

卓

昨日偶然ですが、酒場街演歌集のCD(通販限定)に「博多みれん」が収録されていて、そのCMでサビの部分が少し流れてました。なので、今回五郎ちゃんの曲がアップされて、ビックリしてます。
確かに演歌出身だけあって、新御三家の中では、歌唱力は抜群でしたね?
確か後に、現在のヒット曲とデビュー曲を歌う番組が放送されて、そこで生で「博多みれん」を歌った記憶があるんですが・・・。違ったらごめんなさいm(_ _)m
by (2010-12-13 20:26) 

ぽぽんた

卓さん、こんばんは!

それは偶然でしたね(^^;) そういったCDにヒット曲にはならなかった「博多みれん」
が収録される事自体、かなり不思議な気もします。 

私はテレビで五郎さんが「博多みれん」を歌っているのは観た事がありません。
恐らく、ご自身のいろいろな苦労を思い出して複雑な気持ちになる事でしょう。

因みに「青いリンゴ」のヒット直後から、当時和田アキ子さんが司会をしていた
歌番組「サンデー・ヒットパレード」に野口五郎さんは常連のように出演していた
のを憶えてます(^^)

by ぽぽんた (2010-12-13 23:34) 

オリ25

しかし、ぽぽんたさんサウンド面の解説詳しすぎますね
レコーディングなどに携わってこられたのでしょうか 
今回もヘッドホンでじっくり楽しませていただきます

1番の歌直後の不思議なアレンジ
今回じっくり聞けてやっとわかりました
ストリングスが駆け上がってたんですね
低い音だけが耳に届いてたので、
長い間なんじゃこりゃって思ってました
by オリ25 (2010-12-15 00:01) 

DSwakazou

ほんとに何で演歌だったんでしょうね、デビュー曲。しかも演歌調ポップスですらない真正面からの。ご本人の経歴からしても本意であったとは思えませんが。

ストリングスの駆け上がり、駆け下りって、この時代の歌謡曲の醍醐味って感じがしますね。個人的には、否応無しにアドレナリンの分泌を促進させられます(笑)
by DSwakazou (2010-12-15 20:35) 

なかやま

ナイス!この歌、オリカラでききたい曲No1でした。うれしいなあ。しかしぽぽんたさんの解説は本当にすごいですね。ホント楽しみにしています。野口五郎さんのレコード結構買いましたけど、この歌はもってないんですね、なぜだろう。「雨に消えた恋」「めぐり逢う青春「オレンジの雨」の彼の声量には驚かされました。晩年(といっても若いですが)の「19時の街」とかのころは結構裏声でゴマかして歌っていたような気がしますね。しかし、「真夏の夜の夢」でコロッケさんのモノマネを思い出してしまうのは私だけ? 昨日のTVでコロッケさんがでていて、五郎さんと未だに和解をしていないとか??
by なかやま (2010-12-15 20:50) 

uncle bear

懐かしいですね「日本グラモフォン」アメリカではなく、当時は西ドイツのブランドですからね。(^^)

この曲を初めて聴いたときの衝撃を覚えています。
今でも甘い生活や私鉄沿線などと共にカラオケでよく歌いますが、歌い出しに音域を合わせると、サビのところで大変なことになるので要注意です。(^o^)/
by uncle bear (2010-12-16 19:09) 

ぽぽんた

オリ25さん、こんばんは!

今回の私の解説、くどかったですね(^^;) 読みにくかったら申し訳ありません。
アマチュアとして、録音機器や音楽等に関してはハードにもソフトにもかなり首を
突っ込んできたので、つい書きすぎてしまいがちなんです。

ストリングスの駆け上がり・駆け下がりには色々なパターンがあるので、一聴した
だけでは何なのかわからない事はありますよね。 それを解析するのがまた
楽しくて(^^) そこに作家の個性がかなりハッキリ出ているように感じます。

by ぽぽんた (2010-12-16 22:03) 

ぽぽんた

DSwakazouさん、こんばんは!

う~ん、恐らく野口五郎さんは歌い方が器用だったからではないでしょうか。
しかし若すぎて表現力がついていかなかった…のかも知れませんね。

ストリングスの駆け上がり・駆け下がりは現代の音楽でも勿論使われますが、
70年代あたりはそれが音楽の進行上とても重要で、作家もこぞってそのセンスを
競い、今の音楽よりもレベルの高いサウンドだった気がします。

バイオリンやチェロなどは、人間の声に最も近い楽器とよく言われるんですね。
それが何本も集まって音楽を支えるのですから、そのあたりにDSさん(勝手に
省略してごめんなさい)も私も心を奪われてしまう秘密があるのかも知れませんね(^^)

by ぽぽんた (2010-12-16 22:19) 

ぽぽんた

なかやまさん、こんばんは!

喜んで頂けて何よりです(^^) 私の解説などまだまだです。 楽しみにして
頂けているとは、本当に光栄です。

私は、野口五郎さんが多くのヒットを飛ばしている頃は、何て高い声が出るんだろう、
何てビブラートが深いんだろう、といつも思ってました(^^) 裏声は使っていなかった
のではないかな。 

やはり「晩年」は気の毒ですよ(^^;) 「近年」あたりが適当かと…。

コロッケさんのものまねは凄まじいですよね。 面白いんだけど、あそこまでやると
ややをもすると五郎さんのイメージダウンにつながりますし、五郎さんはご自分の
楽曲に非常にプライドを持っているために(歌手ならば皆さんそうだと思いますが)、
あのようにいじられるのは恐らくかなり不快だろうな、とは思います(^^;)

by ぽぽんた (2010-12-16 22:31) 

ぽぽんた

uncle bearさん、こんばんは!

私は「グラモフォン」と聞くと、どうしてもポピュラー音楽ではなくクラシック音楽の
レコードを連想してしまいます。 私もそのレーベルのレコードを何枚か所有して
いますが、ラベルのデザインがどこか威厳があって好きなんです。

野口五郎さんの曲はおしなべて音域が広いですよね(^^;) 「甘い生活」に
至っては下のC#から上のG#まで1オクターブ+5度あって、普通の人は
そんなに出まへん(^^;) そういう意味で、「甘い生活」の岩崎宏美さんバージョンも
勿論キーは違いますが非常に聴き応えがあります(^^)

by ぽぽんた (2010-12-17 22:09) 

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