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涙から明日へ / 堺正章

前回が「水色の恋」だったので、やはりこの曲も採り上げないと片手落ちのような
気がしたので…(^^;):

涙から明日へ.jpg

「涙から明日へ」は堺正章さんがソロとしてコロムビアに移籍してから3枚目のシングルで、
1971年9月に発売され、オリコン最高4位、同100位内に20週ランクインし
31.1万枚の売り上げを記録するヒット曲となりました。


TBSのドラマ「時間ですよ」の第2シリーズで天地真理さんと堺正章さんが
劇中でデュエットしていた曲ですね。


天地真理さんはファーストアルバムでカバーし、アルバムタイトルにも使われる
ほどの重要な扱いをされていましたが、シングル化はされませんでした。


作詞は小谷夏氏。
「小谷夏」とは、ドラマの演出家・プロデューサーである故・久世光彦氏の、
歌謡曲の作詞をする際のペンネームで、天地真理さんの「ひとりじゃないの」、
浅田美代子さんの「ひとりっ子甘えっ子」など、数多くの曲で作詞をしました。


作曲は山下毅雄氏。
氏は1960年代、1970年代のテレビドラマやクイズ番組の主題曲などを
多く作曲しています。
中でも知名度が高く、独特の暗い曲調を持つ「大岡越前」(TBS)の主題曲は、
今でも人気が高いようです。 私も大好きでした。


この「涙から明日へ」は、歌謡曲では他にほとんど例がないような、
高度で珍しいコード進行が使われています。
少しややこしくわかりにくいかも知れませんので、興味がない方は以下20行ほど
読み飛ばして下さいね(^^;)


① ♪誰か後ろから呼び止める声が~♪ ② ♪胸を熱くするが振り返らない戻れない♪ のコードは
① (C →)F→Em→Dm→C ② Fm→D♭→B♭→G→C7 と進行し、
そこでキーが C から4度上の F に変わるんです。

なぜこのような展開を使用したのかは作者に尋ねないと真意はわかりませんが、
推測できる事としては、聴いている人が「あれ?」と意外に感じるような、
何かひっかかるような印象を作ろうとしたと思われるんです。

そして、予め「C のキーから始めて途中から F に転調しよう」と決めたのでしょう。
そのために必要な事は、転調の直前に、 F に自然に移行できるコードを設定する事。
それは、 F のキーでのドミナント、即ち C7 なんです。

♪胸を熱くするが振り返らない戻れない♪ でのコード進行は、
そのドミナントを導き出すためのやや強引な進行なわけです。 
そして、そのドミナント自身は、転調後の主音(トニック)であるコードの F を
自然に導き出す役目を持っているんです。

ギターやキーボードを演奏する方、ぜひ上記の①、②を実際に演奏して
試してみて下さい。 新鮮に感じてもらえると思います(^^)

以上は、分析についてはともかく、楽曲の制作の流れについては
あくまでも推測ですので、その辺はご承知おきのほどをm(_ _)m


なお、説明を平易にするために、キーが C で、サビで F に転調する、と書きましたが、
実際にはオリジナルキーが E なので、サビで A に転調する…という事になります。
そして間奏を経て、再び最初のキーである E に戻るんですね(^^)


サビの部分を、何の伴奏もなしに歌うとなるとかなり大変です。
流れ的に自然な転調ではなく、特殊な部類の技法なので、
音程が非常につかみにくいんですよね(^^;)

そういった作風は、山下毅雄氏がジャズの作曲法に長けていたという事が
大きな要因と思われます。 …と知ったかぶりのような説明で逃げるしかないほど、
珍しい上に高度な曲作りで、歌謡曲の範疇を超えていると言えると思います。


しかし曲全体としてはゆったりした3連のワルツで、親しみやすいんですね。
高度なのに親しみやすい。
筒美京平氏の作風にも共通する特色ですが、これぞプロの作品!という気がします。


この時代、1970年代前半は、コマーシャルソング(=コマソン)と共に
ドラマの劇中歌が大ヒットになるケースが多く、作り手としてもそれを狙って
力の入った作品を生み出していたんだな、と思えるんですね。


堺さんのヒット曲として知られているのはまず「さらば恋人」、
次に「時間ですよ」の第3シリーズでの劇中歌となった「街の灯り」と思うのですが、
この「涙から明日へ」は「街の灯り」以上にドラマのイメージを
素直に伝えてくれる楽曲だと思います(^^)


「涙から明日へ」
作詞 : 小谷夏
作曲 : 山下毅雄
編曲 : 広瀬雅一
レコード会社 : コロムビア
初発売 : 1971年9月25日

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Marco Polo

「涙から明日へ」をカラオケで聴いてみて
記憶以上にスローテンポで
そして地味な感じだったので驚きました。
マチアキのヒット曲って意外とみんなスローですね。

でもGSは解散してからソロになってもちゃんとヒットを出し
そういった意味ではみんな実力があったのですね。

「時間ですよ」は人気があったけれど
高校生になり普段勉強していたので
歌番組以外は見ていません。

あの頃はチャンネル権は親にあり
ドラマは見せてもらえなかったので
百恵ちゃんの赤いシリーズも見ていません。

真理ちゃんのファーストアルバムのタイトルが
『水色の恋/涙から明日へ』と
なっていた理由がこれでわかりました。
でも個人的にはこういったタイトルのつけ方は
無茶苦茶安易過ぎて嫌いです。

ソニーにはこういったアルバム多いですね。
シンシアにも72年7月に『純潔/ともだち』
百恵ちゃんにも73年12月『青い果実/禁じられた遊び』
ミヨちゃんにも74年5月『しあわせの一番星/恋は真珠いろ』
というのがありました。

2曲を合わせてタイトルを作るなら
せめてゴローの『青いりんごが好きなんだけど』のようにして欲しいです。
でも強引にひとつにならない曲名がふたつ並んでいますが。


by Marco Polo (2010-02-06 23:08) 

ぽぽんた

Marco Poloさん、こんばんは!

確かに堺さんの、ソロになってからの楽曲はスローテンポが多いですね。
キャラクターと声質によるものかも知れませんね(^^)

当時のアイドル歌手のアルバムタイトルは、安易というよりも事務的な感じがして
しまいます。 タイトルだけでなく、その内容も、アイドル歌手のアルバムはシングル
A・B面といくつかの書き下ろし+外国曲や邦楽ヒットのカバーというパターンが
多く、曲の出来よりも「早いリリース」重視という面があり、それは他のレコード
会社もそうだったのですが、画一的に見える事が多々あったんですね。
30年以上経って、そういったアルバムでも高く評価される事が多くなりましたが、
当時は特に洋楽やクラシック好きの音楽ファンから見ると箸にも棒にもかからない
という出版物だったようです。

年月の流れって、不思議ですね(^^)

by ぽぽんた (2010-02-07 00:36) 

オリ25

こんなに大人しい感じだったんですね
「時間ですよ」懐かしいなぁ

若い頃のマチャアキは、声が別人のようで
「さらば恋人」をはじめて聴いた時
驚いた覚えがあります

「幸福への招待」「運がよければいいことあるさ」も
いい歌でしたね~

2年前?の「忘れもの」 もっと売れて欲しかったですね
TBSうたばん でのいじられ方も最高!「物忘れ」には爆笑でした
by オリ25 (2010-02-07 18:27) 

ぽぽんた

オリ25さん、こんばんは!

今の堺さんは、若い頃に較べると随分と枯れた声になりましたね。
私は「ハッチャキ・マチャアキ」を毎週観ていたので、そこで堺さんが歌っていた
曲は全部好きでした。 特に「幸福への招待」(同じですね(^^))、「まごころ」が
大好きでした。

堺さんも昔の歌を歌う時にはかなりフェイクするので、若い頃の素直な歌い方が
ひどく懐かしくなったりします(^^;)

by ぽぽんた (2010-02-07 19:05) 

阿久秀&筒木享平

ぽぽんたさん、こんばんは。

私も山下毅雄さんの凝ったコード進行の曲を見つけました。ルパン三世の第1シリーズ(1971)の曲です。長くなりますが、歌詞とコードです。

Am                 B♭   F   Dm E♭   A D7
足元に絡みつく赤い波をけって マシンが叫ぶ 狂った朝の光にも似た

Gm Cm A♭    E♭E7 Am
ワルサーP38  この手の中に   抱かれたものはすべて消えゆく 

Am C D E
宿命なのさ ルパン三世 ルパン三世

最初、Amで引っ張っておいて、転調して、E♭→E7と進み、ここから、またAmに戻るという計算された技を見ると、山下さんが天才と呼ばれた所以がわかる気がします。

ルパン三世と言えば、大野雄二さんのジャズの感覚を生かしたシャレたテーマソングがあまりにも有名で、この曲は主題歌の金字塔ですが、山下さんの曲も、すばらしく、こちらは、どちらかというとマニア受けするタイプの曲ではないかと思います。

山下さんは、口笛がお上手だったようで、ご自身の作品にも、口笛の演奏が取り入れられており、それが、印象に残ります。


by 阿久秀&筒木享平 (2010-02-11 23:13) 

ぽぽんた

阿久秀&筒木享平さん、こんばんは!

紹介して下さった曲は私はまだ聴いた事がないのですが、コード進行だけキー
ボードで弾いてみました。 初めてみるような進行で、これにどのようなメロディー
が乗っているのか非常に興味を持ちました。 Am→B♭という進行は哀愁を醸し
出すのによく使われるのですが、大抵またAmに戻るんですね。 それがそうならず
Gmのキーに導き入れ、そのサブドミナント(E♭)になった所で半音上げてAmキー
のドミナントとし、Amに戻る…という進行のようですが、全く思いもつかないコード
進行です(^^;) これがジャズの理論で引き出されたのかも私にはよくわからない
のですが、恐らくヴォーカルを担当した人もかなり苦労されたと思います。
ぜひ、今度聴いてみたいと思います。 ありがとうございました!

もしかしたら「大岡越前」のテーマ音楽の口笛も氏かも知れませんね(^^)

by ぽぽんた (2010-02-12 00:25) 

mariminafan

これみたいですね.やはり少し影が薄くなってしまったという感じですが,おぼろげに覚えていました.なつかしいです.
http://www.youtube.com/watch?v=rhuWSfowwpg
by mariminafan (2010-02-12 03:46) 

阿久秀&筒木享平

ぽぽんたさん、mariminafanさん、こんばんは。

ルパン三世の曲は、とても哀愁を帯びた曲ですが、コード進行を見ただけでそれがわかるものなのですね。Am→B♭の進行、勉強になりました。ありがとうございます。なお、お気づきだとおもいますが、歌詞とコードがずれていました。申し訳ありませんでした。

mariminafanさん、ありがとうございます。おかげさまで懐かしい曲を聴くことができました。このページのつながりで、当時の動画も見つけることができました。
http://www.youtube.com/watch?v=AbiH617OUqk&feature=related

ここでも、バックに口笛のメロディーが流れていますね。



by 阿久秀&筒木享平 (2010-02-12 20:54) 

ぽぽんた

mariminafanさん、こんばんは!

Youtubeへのリンク、ありがとうございました! これを聴いて思い出しました。
私も小学生の頃、日本テレビの「ルパン3世」を観ていました。 この曲は確か
エンディングテーマで、ジープのような車がひたすら走っているような背景動画
だったのではないかな? 違ったらすみません。 しかし私もすごく懐かしい思いで
聴く事ができました(^^)

…と書いた後で阿久秀&筒木享平さんが知らせて下さったリンクで動画を見たら
やっぱり違ってました(^^;) ジープではなくバイクでしたね。 このエンディングが
流れると寂しいような気持ちになった事も思い出しました。 阿久秀&筒木享平
さん、ありがとうございました!

by ぽぽんた (2010-02-12 23:03) 

大朝

 他の曲の話で大変申し訳ありません。
 「大岡越前」の主題曲は「水戸黄門」より好きでした。今こちらのCBCという局で「大岡越前」の再放送をやっていて、録画して聴いてみたら聴き覚えのある印象的な良いメロディーでした。歌はないようですね。
by 大朝 (2010-02-12 23:10) 

ぽぽんた

阿久秀&筒木享平さん、こんばんは!

mariminafanさんが知らせて下さったリンクと、阿久秀&筒木享平さんが知らせて
下さったリンクでその実体を知る事ができました。 本当にありがとうございました!

一つの曲として聴いて、コード進行が特殊なのにとてもスムーズに聞こえる事は
驚きです。 私の知識などとても及ばない次元での高度な作曲技術なのだろうと
思います。 この曲を聴いたのは恐らく30年以上ぶりだと思いますが、とても良い
勉強をさせて頂きました。

実際の曲のキーは1音上のBmですね(^^) また♪狂った朝の♪の部分のコードは
DmではなくてDmaj(実際には1音上なのでEmaj)のようです。 細かい事に拘り
申し訳ありません。

by ぽぽんた (2010-02-12 23:24) 

ぽぽんた

大朝さん、こんばんは!

私も「水戸黄門」よりも「大岡越前」のテーマの方が好きです。 15部まで制作
されたようで、音楽が初期の頃と後期とではアレンジが違うんですね。
私はやはり、初期の方が好きです。

子供の頃この曲を聴いて、後半に女性のスキャットが登場して最後は音を長く
引っ張るのを聞いて「よくこんなに長く声が出せるなぁ」などと思っていました(^^;)

by ぽぽんた (2010-02-12 23:35) 

阿久秀&筒木享平

ぽぽんたさん、みなさん、こんばんは。

ぽぽんたさん、くわしい検証ありがうございました。

山下さんのアルバムを探してみると、作品集という形でたくさん出ていました。中には、プレ値がついたものもありました。氏の熱烈なファンの方もたくさんいらっしゃるようで、人気と評価の高さを感じました。氏の作品には、奥の深い魅力がありますね。

「ルパン三世」の動画をきっかけに、you tubeを見て、いろいろなアニメソングの魅力に、少し、はまってしまいました。
by 阿久秀&筒木享平 (2010-02-13 22:06) 

ぽぽんた

阿久秀&筒木享平さん、こんばんは!

私も「涙から明日へ」を採り上げて、改めて山下氏の音楽にとても興味を持って
しまいました。 たまにデジタルラジオで氏の特集(というよりも主題曲特集)を
放送する事があるので、その時にじっくり聴いてみようと思ってます。

アニメの音楽もホント、侮れないですよね(^^;) Youtubeで私もいろいろ見て
いるんです。 ただ、テレビのバージョンとレコード化されたバージョンとで大きく
違う事があるので、CDなどを買う時には注意が必要なんですよね。

by ぽぽんた (2010-02-14 23:47) 

青大将

こんばんは。 「九月の雨」では、はやとちり やらかし、すみませんでした。m(_ _)m 《エクセプト》を素通りし、気持ち悪い名称斗りに目を奪われてしまい、てっきりその様なモノ迄大丈夫な人なのかと勘違っちまいました。 お詫び申し上げます。 m(_ _)m 扨、わたくしは、時々この様な過去の出し物にもお邪魔しますのでご注意と御了承を。 (^^) さっき迄、堺 正章のシングル盤を何曲か聴いていた関係で、こちらにやって来た次第です。 特に意味はなく、何となく聴いてました。 個人的に「運がよければいいことあるさ」が好きなのですが、どのシングルもB面に手抜きが無く、『買って良かった』的な、グレード高いものばかりです。
「誰でも愛を求めている」(「幸福への招待」:B)や、「若い旅人」(「運が~」:B)、「上海特急」(「STAY with ME」:B)、どれもカラオケで(あれば)歌いたいものばかり。 西遊記の劇中歌「SONGOKU」も大好きでした。
72~3年頃の筒美京平作品は、尾崎紀世彦「ふたりは若かった」、平山三紀「フレンズ」等 未だ 色褪せない、聴いててエネルギーが漲って来る楽曲が多いんですよ。 麻丘めぐみ や 南 沙織 のとは、又ちょっと違うんです。
87年に中山美穂の「派手!!」を聴いた時、麻丘めぐみの「ときめき」に似た勢いの様なものを感じて「おっ!」と思ったのですが、それ以降はそんな感覚も無く、寂しい限りです。(-.-)
またまた逸れましたが、カラオケで歌う際、「涙から明日へ」は、歌い出しは未だしも、段々と音が上がって行くに連れて声が続かない様な気がしますねー。 ま、歌ってみんと分からんけど。(何か俺は酔っ払うと声量が増す気がする)「九月の雨」はB面「マニキュアの小壜」忘れてましたが、これも大好きでした。 「あじさい」はYouTubeで久々聴きました。(^O^)
by 青大将 (2010-10-11 01:49) 

ぽぽんた

青大将さん、こんにちは!

いえいえ、私こそ素直に「…以外」と書けば良かったんです。 こちらこそ、どうも
ご迷惑をお掛けしました。

私は、堺正章さんの楽曲についてはシングルA面しか知らないのですが、何でも
1972年に発売されたアルバム「サウンド ナウ!」は全曲筒美京平氏の作・編曲の
名盤だそうで、それはぜひ聴きたいと思っているんです。 それに入っている曲は
「堺正章しんぐるこれくしょん」に全曲入っているらしいのですが、私は一枚のアルバム
として欲しい!とずっと思って今日に至ってます(^^;)

私も筒美京平氏の楽曲は、1970~1973年あたりが最も好きです。 その音楽を
聴いている時の充実感は、他の作家の作品では味わえないですよね。 とは言え
私はまだまだ聴いていない曲が山ほどあるので、楽しみは続きそうです(^^)

カラオケと言えば、なぜカラオケボックスのリストってああも偏っているんだろう、と
いつも思ってしまうんです。 曲目本に3~4ページくらいぎっしりの歌手もいるのに
特に70年代のアイドルのそれは異常に少ないですよね。 自分の好みばかり
言っても仕方ないのですが、それでも確かに偏りはあると思います。

「涙から明日へ」は本文にも書いた事ですが、♪胸を熱くするが 振り返らない♪
のところから変わった転調の仕方をしているので、音程がとりにくいんですね。
音の高さについては、「さらば恋人」が原キーで歌えれば大丈夫です(^^)

太田裕美さんはB面も良い曲が多いですよね。 私は「Singles 1974-1978」
が愛聴盤です。

by ぽぽんた (2010-10-12 11:32) 

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