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若き獅子たち / 西城秀樹

このジャケ写、カッコいい(^^)
若き獅子たち.jpg

チャートアクション

「若き獅子たち」は西城秀樹さんの18枚目のシングルとして1976年9月に発売され、
オリコンシングルチャート最高4位(同年9月27日付)、同100位内に21週ランクインし
23.0万枚の売り上げを記録しました。

発売後、間もなく最高位となりわりとすぐに順位が落ちていきましたが、
それでも100位内に20週以上もとどまったのは、時間をかけて秀樹ファン以外にも広くアピールし、
浸透していったからでしょう。


作家について

作詞は阿久悠氏、作曲・編曲は三木たかし氏で、
西城秀樹さんの1976年のシングルはすべて同コンビによって作られています。

翌年3月発売の「ブーメラン・ストリート」は、編曲のみ萩田光雄氏に交代し、
新しいサウンドの模索を始めたようです。


歌詞について

阿久悠氏は、西城秀樹さんの能動的な面をより強調する方向にこだわっていたようで、
その頂点が、前作の「ジャガー」ですね。
「若き獅子たち」は「ジャガー」より少し大人になった主人公の男性が相手の女性を諭し、
お互い新しい道を歩こう…と言った内容で、
阿久悠氏は1976年の1年をかけて、西城秀樹さんに一人の男の成長を表現させよう
としていたように思います。

「風よ嬲(なぶ)るな 獅子の鬣(たてがみ)を」とは「風よライオンのたてがみを揺らすな」
と言う意味だそうですが、それで作者が何を伝えたかったかは聴き手の判断に任せるとして、
そのような文学的な表現が歌詞に普通に登場のは聴く側の充実感にもつながると思うんです。
現代に多い独り言のような歌詞にも、それはそれで良さがあるのですが、
作品の重要な要素の一つが「深み」であったとしたら、現代の歌に深みが欠けると感じるのは、
意味を調べたくなるような言葉が殆ど使われない事が大きいかも知れません。


楽曲について

私は常々、三木たかし氏の作風は筒美京平氏のそれと共通点が多いように感じていますが、
今回の「若き獅子たち」は、恐らく筒美氏の作品にはないタイプの1曲です。
それを最も感じるのがメロディーの力強さです。

筒美氏は歌メロとオケのアレンジとが合体して成立している曲が多いように思うのですが、
三木たかし氏の楽曲は、まず歌メロ自体が自立かつ完成していて、
オケのサウンドがそれを盛り立てる事に徹する、と言ったパターンが多いように思うんです。

メロ譜を作りましたので、それを確認してみて下さい(2コーラス目は端折ってます)。
オケがなくても十分に音楽として感じる事ができるのがわかって頂けると思います:
若き獅子たちscore.jpg

基本はリズムが8ビート、キーがB♭メジャーで最後のサビで半音上に転調…なのですが、
厚みのあるストリングス、派手なシンコペーションでビッグバンドのようにも聞こえるブラス、
そこに壮大な男性コーラスが加わり、
結果、ヒット狙いの歌謡曲とは思えない、スケールの大きなサウンドとなっています。

コード進行はやや複雑で、分数コードが多用され、歌謡曲らしからぬ表情のサウンドが
随所に出てきます。
特にイントロとエンディングのカッコ良さは出色ですね(^^)

サビ前で4小節だけD♭メジャーに転調しているのも、次の展開を大いに期待させるような
効果を感じさせます。

聴く人によっては全体にくどさを感じる場合もありそうですが(^^;)

サビでは小太鼓(実際にはドラムスに組まれたスネアと思いますが)が前面に登場し、
マーチのリズムを刻むのは、他ではまず聴けない、大胆で効果的かつ印象的で、
歌詞の内容の切なさをそのリズムで昇華し前向きなものに変えているのが、
この曲の最大の持ち味と言えるかも知れません。
のどかな感じも受けるのは、昔の西部劇で登場人物が馬に乗ってゆっくり移動している
ようなイメージが湧くからかな(って私だけですか(^^;))

さらに、転調してからのサビ繰り返しで次第にテンポを上げているのも珍しい手法で、
それが奇異でないのは、エンディングに向かっての高揚感としっかりリンクし、
必然性さえ感じさせるからでしょう。

余談ですが、西城秀樹さんのシングル曲ではそれまでにもテンポを操作している曲がありましたね。
最初が「ちぎれた愛」、次の「愛の十字架」、そして「傷だらけのローラ」ですが、
「若き獅子たち」のようなテンポ操作は初めてでした。
他の歌手の曲では、天地真理さんの「初恋のニコラ」(1980年)が同じ手法ですね。


歌メロは大変起伏が激しく、特にサビの ♪…獅子のたて髪を 涙をかざれない…♪
などの部分では一気に短7度も上がったりしていますが、西城秀樹さんは難なくこなしています。

歌メロの音域は下のDから上のF#までの10度で、特に広いわけではないのですが、
歌唱のダイナミックレンジが広いので、音域以上にドラマ性を感じます。


サウンドについて

使われている楽器は決して種類は多くないのですが、
ストリングスやブラス、コーラスは通常の歌謡曲よりも人数感じのある、
それぞれが厚めのサウンドになっています。

この時代の歌謡曲ではまだあまり例がないほど、ドラムスのスネアが張り出していて、
勇ましさを感じさせるサウンドに西城秀樹さんの歌唱が最高に合っています。

コードバッキングは左右に広がって聞こえるアコースティックピアノ、
そして右から聞こえるエレキギターが担当しています。
このギターは音色自体はディストーションもなくストレートですが、
軽くフェイズシフター(あるいはフランジャー)がかけられているようです。

ドラムス以外のパーカッション類が聞こえて来ないのは珍しい事かも知れません。


使われている楽器とその定位は:

左-中央: ブラス(トロンボーン)

中央: ベース ドラムス 

中央-右: ブラス(トランペット)

右: ブラス(トランペット) エレキギター

左-右: 男性コーラス ピアノ ストリングス(左からバイオリン、ビオラ、チェロ)


歌唱について

この曲は西城秀樹さんが21歳の時に発売されましたが、
すでに円熟味のようなものが感じられる事に驚かされます。
特にAメロでややため気味に歌うパートでは、1コーラス目と2コーラス目との歌い分けの効果もあり、
歌詞の内容がひしひしと伝わってくるような、語りかけるような歌唱です。

それに対してサビでの、声量たっぷりの歌い上げには快感さえ覚えます。
転調して最後のサビに入る部分では西城秀樹さんならではのつぶし声も入り、
リズムの乗り方も完璧で、非の打ち所がないプロ歌手の歌唱、ですね。

…しかし何より声質が素晴らしいですね。
様々な音程や歌詞に柔軟に対応できる音色を持っているので、一本調子にならない。
それは歌手にとっては最大の武器、と思います。


付記

西城秀樹さんの全盛期は1973年から1980年まであたりですが、
その間の楽曲の充実ぶりは大変なもので、ならべて聴いていくだけでその凄さがわかります。
制作費が潤沢にかけられている事もわかりますし(^^)

特に実験的な要素が多く、西城秀樹さんが歌手として戦っていたのが、
阿久悠氏と三木たかし氏が作品作りを担当していた時代だと思われます。
その中でも「若き獅子たち」は、歌詞、メロディー、編曲のどれをとっても最高と言えるでしょう。
作・編曲者は違いますが、「ブルースカイ ブルー」は「若き…」の成功があっての
企画・制作であったように思えてなりません。

西城秀樹さんの楽曲に限らず、その時代に生まれた曲の多くは、
耳元をさわやかの通り過ぎる…のではなく、
聴いた後に心に何か余韻を残す、それが何なのかを確認したくなる…
そんな曲が多かった、だから今も心に残っている…と言えないでしょうか。
私はそれはいつも感じています。
だからきっと、40年前以上の曲も、全然飽きないんですね(^^)


西城秀樹さんの話に戻りますが、もの凄い勢いで70年代を走ってきた西城秀樹さんに、
初めてブレーキをかけたのが1980年3月発売の「愛の園」だったと思います。

前年(1979年)の国際児童年を受けて制作されたと思われるスティービー・ワンダーの
バージョンがすでに知られており(曲の後半に日本語の歌詞が出てきます)、
彼と同じようにヤマハGX-1(世界最高峰のエレクトーンとされ、「ドリームマシン」と呼ばれた
大型の鍵盤楽器です)を駆使して作られた話題のカバー曲でしたが、
西城秀樹さんが歌う必然性が感じられない事が失点だったように思います。
しかしそれによってアイドル的な勢いが収まり、安定期に入ったと言えるかも知れませんね。

私は個人的にGX-1のサウンドが大好きなので(私が超が付くほど大好きなアルバム、
アバの「SUPER TROUPER」でも派手に使われています)、「愛の園」も当然、好きです(^^)


「若き獅子たち」
作詞 : 阿久悠
作曲 : 三木たかし
編曲 : 三木たかし
レコード会社 : RCAビクター
レコード番号 : RVS-1032
初発売 : 1976年(昭和51年)9月5日

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純粋に、クイズです。

ぽぽんたです。
何だかこのところ、急に日が短くなりましたね。
私は薄暮の時間帯が何となく好きなのですが、
最近はそれを楽しむ間もなく暮れてしまって残念に思う事があります。

今はまだ土曜なのでややフライング気味ですが…

次の音源は、私が次回記事にする予定の楽曲のごく一部
(のオリジナル・カラオケ)です。
その曲名と歌った歌手を当てて下さい:

え?ヒントですか? そうですね、歌詞の内容は時期的にちょうど今頃か、
もう少し前くらいかな…。
デビューした頃は「ヘタ」と言われていたのに、この曲の頃には
大人も納得させられる歌唱力に成長していた、そんな歌手のヒット曲(1975年)です。

私はこの曲のシングルを、発売されたばかりの頃に兄に買ってもらったんです。
それだけでなく、桜田淳子さんのコンパクト盤(「はじめての出来事」「花占い」ほか4曲入り)
も一緒に買ってくれていて、嬉しくて何度も聴いた思い出があるんです(^^)


今回もコメント欄を「受付/承認後表示」のモードにしておきますので、
コメント欄に回答をお願い致します。

正解の発表とコメント欄の開示は次の金曜(26日)の夜に行う予定です。


ではでは、回答をお待ちしてます(^^)/

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では正解を…

人恋しくて (南沙織)でした。

♪恋の相手は(いるにはいるけど…)♪ の部分です。

回答・コメントを下さった皆さま、ありがとうございました!

明後日、この曲について記事を書きますので、ぜひまたおいで下さい(^^)/

(この記事のコメント欄は通常モードに戻しました)
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良かったらご一聴を(^^)

「メリーランドからの手紙」(demo) ぽぽんた作 歌:向はつみ

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人恋しくて / 南沙織

デビュー5年目、堂々のレコード大賞歌唱賞受賞曲です(^^)

人恋しくてジャケ.jpg

チャートアクション

「人恋しくて」は南沙織さんの15枚目のシングル(洋楽カバーを除く)として1975年8月に発売され、
オリコンシングルチャートで最高8位(同年8月25日・9月1日付)、同100位内に19週ランクされ
23.2万枚の売り上げを記録しました。

前々年12月発売の「ひとかけらの純情」以来、6曲ぶりのオリコントップ10入り、
そして売り上げ20万枚超のシングルとなりましたが、
南沙織さんの最後のトップ10シングルとなりました。


作家について

南沙織さんのシングルは、デビュー曲「17才」(1971年6月)から「想い出通り」(1975年4月)
までの14曲を作詞・有馬三恵子、作曲・筒美京平のコンビが担当していましたが、
「人恋しくて」は作詞・中里綴、作曲・田山雅充のコンビと、初めて新たな作家を迎えた
作品となりました。

中里綴氏は江美早苗の芸名でダンサー・歌手、そして女優としてキャリアをスタートした人物で、
今も毎週日曜に放映されている「新婚さんいらっしゃい」(テレビ朝日)の初代司会者でもあります。

田山雅充氏はフォーク歌手で、「人恋しくて」のヒットの翌年には自身が作曲し歌唱した
「春うらら」がヒットしました。

編曲は著名はスタジオギタリストである水谷公生氏です。
水谷氏はギタリストとしては尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」、キャンディーズの「春一番」等、
特に1970年代の多くのヒット曲でその演奏を聴く事ができますし、
作・編曲家としても多くのヒット作を世に送っています。


歌詞について

「煙草の煙 見つめて過ごす」のフレーズは、シチュエーションが自分の部屋で
一人過ごしている場面ですから、その煙草は「喧嘩別れしたばかり」の彼氏の忘れ物、
あるいは主人公自身の持ち物でしょう。
当時のアイドルには、煙草はイメージ的に排除すべき対象の最たるものでしたから、
その歌詞を歌わせる事には恐らく、スタッフ間で賛否両論があったのではないでしょうか。

ちょっと不可解なのが3コーラス目で、
「風は昼間は暖かいけれど 夜はまだまだ肌寒くなって」とありますよね。
まだまだ肌寒い、とはそれまで寒かったのが少し暖かくなってきた時期の表現ですから、
この曲が発売されヒットした季節、即ち秋口ではなくむしろ春である事になります。
しかし私にとってはやはり、この曲は秋に合う曲として記憶しているので、
気にし出すとやや、ムズムズする感じがしてしまいます(^^;)

しかしこの曲は何と言っても「暮れそうで暮れない黄昏どきは」の語感が素晴らしく、
それが一度聴いただけで記憶に残ってしまうのがヒットの最大の理由と思います。


楽曲について

イントロに続いてまずサビを一発かまし、強いインパクトを残して
後サビ構成の歌メロを3コーラス分と、非常に珍しい構造となっています。

キーはBマイナー(ロ短調)で、部分的に平行調のDメジャーを通過しますが、
他調に渡る転調はありません。

イントロとコーダはアコギとストリングスで演奏されています。
その時のコードは Bm→C#→Bm/D→Em→F#→G とベース音が上がっていくカウンターラインで、
次にどんなコード!?と思っていると何と C#m となるのがとても新鮮です。
通常だともう一度 C# となるところであり、歌謡曲らしからぬコード進行と言えます。

オケのリズムは8ビートが基本ですが、歌メロはフォークでよく使われる16ビートで、
どこか急いでいるような、落ち着かないような雰囲気が感じられます。
南沙織さんは16ビートが苦手、と担当ディレクターだった小栗俊雄氏が語っていますが、
「人恋しくて」では、ややぎこちなさを感じさせる歌唱がかえって歌詞の内容を
的確に表現しているように思います。

歌メロ部のコード進行は平易で、特殊なコードは皆無です。
ただ、面白いのが歌い出しの4小節で、そこのコード進行は Bm→Em6→F#7 Bm→Em6→F#7 で、
筒美京平氏が作曲して欧陽菲菲さんが歌った「雨のエアポート」の歌い出しと同じなんです。
田山雅充氏が筒美氏の作品を意識して作ったとは考えにくいのですが、
もしかしたら制作側から何らかの指示があったのかも知れませんね。


アレンジについて

3コーラス構成の楽曲では大抵、1コーラス目と2コーラス目をほぼ同じに、
3コーラス目で変化を持たせてそのままエンディングに入るパターンが多く、
「人恋しくて」でも同様のパターンではあるのですが、
その変化がかなり大きいのが聴きどころでもあります。

まずドラムスとベースギターですが、2コーラス目まではサビ(♪暮れそうで暮れない…♪)だけ、
3コーラス目では歌メロの頭から演奏されている、その使い分けがカッコいいんですよね(^^)

歌メロに入る直前のメロディーも、それまでがアコギだったのが、
3コーラス目に入る時にはストリングスに入れ替わっていて、新しい展開を感じさせます。
ストリングスは歌メロが始まってからもずっと鳴っていますね。

その他にも、それまでアコギが演奏していたオブリガートをストリングスにしたり、
サビ前で鳴っていた鈴(りん)とタンバリンを鳴らさなかったり…等、
3コーラスを飽きずに通して聴かせる工夫があれこれと施されています。


使われている楽器はすべて生楽器であり、電子楽器は一切使われていません。
間奏や2コーラス目の裏メロなどで木管楽器であるオーボエが効果的に使われていて、
さらにそれに寄り添うようにファゴット(バスーン)が対旋律で演奏されています。
ファゴットはクラシック、特にバロックでは欠かせない楽器の一つで、
歌謡曲やポップスで使われる事は稀なのですが、
この曲ではその音色が加わる事で夕暮れ時の風景をより感じますし、
意識して聴いていると「なんて繊細なアレンジなのだろう」と感動してしまいます。


サウンドについて

この曲でのサウンドで目立つのはアコースティックギターとドラムスの音作りでしょう。

アコギは中央、左寄り、右寄りそれぞれ1本ずつ、そして左に1本と
合計4本使われており、どれも倍音が豊かに収録されています。
やはりどれも水谷氏の演奏でしょうか。

ドラムスは特にスネアの音が重要で、ややゆるめにチューニングされ、
胴鳴りも多めに感じられます。
この曲では静かな部分とオケが鳴っている部分とのコントラストが重要であり、
その橋渡しの役目をスネアが受け持っているんですね。
この時代は歌謡曲ではスネアを前面に出す音作りはまだ少なかったので、
新鮮に聴こえた事でしょう。

キーボードが殆ど使われていないのですが、ストリングスや女性コーラスが
コード感をより高めています。


「人恋しくて」で使われている楽器とその定位は:

左: アコースティックギター(コードカッティング) 鈴(りん) ハモンドオルガン

左-中央: アコースティックギター(歌い出し前後のメロディー)

中央: ドラムス ベース アコースティックギター(イントロ、コーダでのメロディーのみ)
   オーボエ ファゴット

中央-右: アコースティックギター(コードアルペジオ)

右: タンバリン エレキギター(カッティング)

左右ステレオ: ストリングス(右方向にチェロとビオラ、左方向にバイオリン)
       ウィンドチャイム(中央付近でやや広がって定位)
       女性コーラス

FM東京「サウンドインナウ」で放送されたオリジナルカラオケでは、
歌入りでは中央と左寄りに分かれていたギターが中央に集約されています。
また、歌入りで中央から右寄りに定位しているアコギ(アルペジオ)は元々ステレオ収録
であるようで、カラオケでは中央寄りながら左右に広がって定位しています。

また、3コーラス目にハモンドオルガンが入って来ますが、
オリジナルカラオケではそれが歌入りよりも大きい音量でハッキリと入っています。

他の楽器やコーラスも、歌入りとカラオケとでは音量バランスがかなり異なるので、
そのカラオケ音源はテストミックス(あるいは意識して別ミックスにした)と思われます。


付記

1975年8月11日に放映された「夜のヒットスタジオ」は沖縄からの生中継で、
本来ならば当時開催されていた沖縄海洋博の会場で演奏されそれが放送される予定でしたが、
台風が来て屋外での演奏が不可能となり、仕方なく出演予定の歌手がスタッフ用のブースに
集合しての放送となりました。

出演歌手は山口百恵さんや五木ひろしさん、黒木真由美さん等で、南沙織さんもいました。
バンド演奏がないので、当然のようにそれぞれの歌のオリジナルカラオケを使用しての
歌唱となったんですね。
狭い空間に出演者が全員集まり、各人とても歌いにくそうでしたが、
その分、歌唱自体は生々しくて、意外と聴きものになったような感じがします。

南沙織さんは発売されたばかりの「人恋しくて」を歌いました。
笑顔が殆どなく、キョロキョロと落ち着かない様子でしたが、
レコードの歌唱よりも抑揚の大きい、迫力のある歌声でした。
その回は数年前にCSで放送され、私も録画して保存してありますが、
当時の歌謡界の普段見られない面が見えるような、貴重な回だった気がします。


「人恋しくて」で一旦、筒美京平氏から離れた南沙織さんでしたが、
その後も「ひとねむり」「ゆれる午後」などで再び組む事になります。
しかしやはり、以前ほどのヒットには至らず、南沙織さんの歌手キャリアも
そのままフェイドアウトしていってしまったのが残念です。

ただ、筒美氏の作品なら手放しでどれもいい!と言うわけでは決してなくて、
先述の「ひとねむり」などタイトルからして売れそうにないし、
「ゆれる午後」も恐らくプロデューサー等とのコミュニケーション不足だったのか、
ハッキリ言って駄作だと思います。

しかしそれで終わらないのが筒美氏の筒美氏たるところで、
南沙織さんの事実上のラストシングルである「Ms.」は、
まるで南沙織さんのデビューに立ち返ったような作風、
そして筒美氏が洋楽拝借ではなく自身が本来持っているメロディーセンスを発揮し、
それに有馬三恵子氏も持ち味である生々しさとシニカルさをにじませた歌詞を重ねて
出来上がった楽曲だと私は思っています。

「Ms.」は曲調が底抜けに明るく、筒美氏らしいストリングスアレンジを含め
どこにも迷いが感じられずのびのびとしていて、有馬氏と筒美氏が南沙織さんに提供した
楽曲の中でも最高傑作の一つに間違いありません。

チャート関係は奮いませんでしたが(最高80位)、YouTubeなどに歌唱シーンが
アップロードされていますし、ベスト盤にも収録されているので、
良かったら一度、聴いてみて下さい(^^)


「人恋しくて」
作詞 : 中里綴
作曲 : 田山雅充
編曲 : 水谷公生
レコード会社 : CBSソニー
レコード番号 : SOLB-293
初発売 : 1975年(昭和50年)8月1日


すみません! 次回は18日(日曜日)に更新しますm(_ _)m

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