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聖母たちのララバイ / 岩崎宏美

このブログでは今さら感満点の選曲ですが…

聖母たちのララバイジャケ.jpg

この曲の登場の成りゆきはあまりに有名なので省略しますね。
しかし「火サス」でカセットテープのプレゼントを打ったところ35万通の応募があった、
それも当時はネットなどなくはがきでの応募だった事を思うと、
はがきの代金や手間をかけてもフルで聴いてみたいと思う人をそこまで増加させたのは、
歌唱を含めた楽曲自体のパワーがとてつもなかった…と言う事ですね。

個人的な見解ですが、岩崎宏美さんのファンの間では、「聖母…」が一番好き、
この曲が最高傑作だ…と思う人はそうはいないと思うんです。
それでもあれほどの大ヒットになった(オリコン最高1位、4週連続、80万枚)のは、
むしろ宏美ファン以外から大きく支持された楽曲だったと言うこと。
歌手からすると、それはとても価値のあるヒットだったのではないでしょうか。


作詞は山川啓介氏、作曲・編曲はは木森敏之氏。
両者にとって、この「聖母たちのララバイ」は最大のヒット曲なんですね。
作曲についてはイギリスの作曲家、John Scott氏から部分的な盗作との指摘を受け、
それを木森氏が認めたために、クレジットの上では両氏の共作となっています。


歌詞の内容からすると、「聖母たち」と複数で表現されたタイトルであるのは違和感を覚えますが、
つまりは聖母マリアに通じるような母性を持ち、相手の男性を見守る女性がこの世界のどこにもいる
と言いたいのだな…と解釈できると思うのですが、どうでしょう。
この曲を支持したのは、もしかするとそれを信じたい男性が多かったのかも知れませんね。


曲の構成はA・A'・B、A'・B、そしてBの最後のフレーズを一度繰り返し…の、やや変則的な作りです。
8ビートを基本としたバラードロックとも呼べそうなリズムですが、
Bメロ(サビですね)の終わり ♪(小さな)子供の昔に帰って 熱い胸に…♪ では岩崎宏美さんらしい、
16ビートで畳み掛けるようなメロディーで大いに盛り上がってから収束します。

Aメロはコードをアルペジオにしてそのままメロディーの軸にしたような作りで、
「しあわせ芝居」(桜田淳子)と同じ構造です。
こういった曲はキーボードやギターでメロディーを弾く分にはわかりやすいのですが、
歌うにはリズム感と音程の正確さが露呈する事になるため、難易度は大変高いと思います。

BメロはAメロのようなメカニックさは抑えめでスムーズな音使いですが、
♪この~まちは♪♪せんじょう~だから♪…と高め→低めを繰り返す動きも採り入れられ、
曲のドラマティックさが最優先で、歌手には音程や音量を細かく操作する高い技術を求めてしまう
作りと言っていいと思います。


原曲(レコード化された音源)のキーは Bマイナー(ロ短調)ですが、
当時から、テレビ等で演奏される時は例外なく、それより半音低い B♭マイナー(変ロ短調)でした。
それは、原曲のままだとメロディーの最高音はハイDに達し(Bメロの ♪熱い胸に…♪ の「ね」)、
当時の岩崎宏美さんが地声で出せるギリギリの高さだったため、
テレビ出演などで何度も歌うことになると喉への負担が大きすぎる故の対策だったのでしょう。

ただ、レコード音源を聴くと、声質がやや幼い感じを受けるのが私には以前から気になっていまして。
この曲のレコーディングは24トラックのマルチトラックレコーダーが使われたと思われますが、
もしかすると、歌ダビの際にはテープスピードを半音分ほど落として行われたのかも知れません。

1982年の大晦日に放映された「NHK紅白歌合戦」で、岩崎宏美さんはこの曲を歌いました。
しかしその日のコンディションは、少し前から喉を痛めていたために最悪だったようで、
1コーラス目は持ち堪えたものの、2コーラス目の最後ではついに声が大きく荒れてしまいました。
その場面は今ではYouTubeにもアップされていますが、1コーラス目のサビでも音程が上がり切らず、
曲が淡々と進行していく中で宏美さんが「やはり思うように声が出ない…でも乗り切らないと…」
と動揺しているのが手に取るように判り、胸が痛む思いがします。

翌1983年のライブでは、例えば「私たち」のようなハイトーンを求められる曲もこなしていたのですが、
岩崎宏美さんが自身のレパートリーをオリジナルのキーですべて地声で歌えていたのは、
実質的にその年あたりが最後だったようです。


コード進行に関してはごく普通のポップスであり、7thとメジャー7thが多用されている、
sus4が使われていない…あたりが特徴と言えば特徴でしょうか。

それよりもストリングスが全体を支配するようなアレンジであるのが耳に残ります。
特にBメロに入ってからは、歌メロを支えるハーモニーのような動きとなっているのが、
他の曲ではあまり耳にしない手法と言えます。

♪(小さな)子供の昔に帰って 熱い胸に甘えて♪ の部分でのコード進行についてですが、
わかりやすくするためにAmに移調すると、そこのコード進行は
Dm7→Em7→F→Bm7-5→E7→Am となります。

従来だと、Fの次にはB7(Ⅱ7)、そしてE7に流れるのが普通ですが、
ここではそのB7の代わりにそのハーフディミニッシュであるBm7-5が使われ、
それだけで洗練されたような響きとなるのが面白いところです。
試しにそこをB7に入れ替えてキーボードで弾いてみると、確かにちょっとダサく感じます(^^;)
そのようなコード進行は、ニューミュージックの台頭で普及してきたように思います。

逆にここはハーフディミニッシュが来るだろう、と思う所にストレートなⅡ7が入っている例が、
「いい日 旅立ち」(山口百恵)のイントロだったりしますが、
そちらはよくぞ、ストレートにⅡ7を選んでくれました!と称賛したくなるフィット感です(^^)


この曲がヒットした1982年は、コンパクト・ディスクの発売が始まった年です。
私は初めてCDプレーヤーを買ったのが1984年の暮れで、ヤマハのCD-X2なる機種でした。
それから間もなく、すでに岩崎宏美さんの初めてのCD(かな)である「スペシャル・コレクション」、
即ちただのヒット曲寄せ集めと言っていいような内容のベストアルバムを買ったんですね。
hiromi spcl.jpg
そのCDに収められた「聖母たちのララバイ」の、その音には心底びっくりしたものです。
それまでレコードでのこの曲の音は小ぎれいで、それなりに良い音でした。
対して「スペシャル…」の音は、マスターテープの音を整音せずにそのまま入れたような、
粗削りで繊細さに欠けるとも言える、レコードとはまるで違う音だったんです。

しかし、Aメロが終わってドラムスがクレッシェンドでドンドンドン…と徐々にボリュームを増し、
ストリングスとホーンがジャジャジャジャン!とキメる箇所の、何たる迫力!
通常レコードに音楽をカッティングする時、針飛びなどを考慮して音量差を圧縮しますが、
CDはその心配がないので、マスターテープのダイナミックレンジをそのまま生かせるんですね。
私がそのCDで聴いたのはまさにCDの特性をそのまま生かした音だったわけです。

尤も、それから何年かすると音量戦争が始まって、音量差を強制的に縮めた上で
常に大きな音量にするのが主流になって、せっかくのダイナミックレンジが生かされなくなり、
このままCDも終息してしまいそうで残念ですが…。

「スペシャル…」は他の曲でもいかにもマスターテープそのものと言った音でしたが、
「聖母たちのララバイ」の録音・サウンドは特にそれが顕著で、
それまでに感じた事のなかった次元での音楽の楽しみを伝えてくれた、と思っています。


「聖母たちのララバイ」は、シングル用にイントロをやや派手にしたバージョン、
静かなイントロで始まるTVバージョン(アルバム「夕暮れから…ひとり」に収録)がありますが、
歌部分のアレンジや歌唱はほぼ両者とも同じなので、元のマルチトラックテープも同じでしょう。
私はどちらかと言うと、おとなしめのTVバージョンの方がドラマティックに感じられます。

ところでこの曲、翌年(1983年)春の選抜高校野球大会の入場行進曲に選ばれましたよね。
その7年前に「センチメンタル」が選ばれた時には、明るい曲だったので納得できましたが、
この「聖母たちのララバイ」で入場行進ってかなり、微妙じゃなかったすか(^^;)


「聖母たちのララバイ」
作詞 : 山川啓介
作曲 : 木森敏之、John Scott
編曲 : 木森敏之
レコード会社 : ビクター
レコード番号 : SV-7209
初発売 : 1982年(昭和57年)5月21日

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お知らせ

事情があって長い間非公開状態にしてあった記事を一挙に再公開しました
(一部内容を編集してあります):

古い順から

赤い風船(浅田美代子)
恋にゆれて(小柳ルミ子)
また逢う日まで(尾崎紀世彦)
どうにもとまらない(山本リンダ)
赤いハイヒール(太田裕美)
硝子坂(高田みづえ)
リップスティック(桜田淳子)
夏の感情(南沙織)
他人の関係(金井克子)
スマイル・フォー・ミー(河合奈保子)
横須賀ストーリー(山口百恵)
もっと・あなたを・知りたくて(薬師丸ひろ子)
暑中お見舞申し上げます(キャンディーズ)
ブルー・シャトウ(ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)
白いパラソル(松田聖子)
男の子女の子(郷ひろみ)
夜間飛行(ちあきなおみ)
ロマンス(岩崎宏美)
わたしの彼は左きき(麻丘めぐみ)
夏の夜のサンバ(和田アキ子)
SEPTEMBER(竹内まりや)
渚のうわさ(弘田三枝子)
ウォンテッド(ピンク・レディー)
ふれあい(中村雅俊)
長崎から船に乗って(五木ひろし)


以上です(タイトルをクリックするとその記事に飛びます)。

2009年から2010年にかけての記事ですので、現在とはかなり趣が違う感じなのですが、
自分で読み返してみて「え!こんな事書いていたんだ!すっかり忘れてた」
と思うものが多く、結構楽しめました(^^)

いや、それよりも更新のインターバルの短いこと!
今はちょっと無理です(^^;)

良かったらぜひアクセスしてみて下さい。

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もとまろ

ぽぽんたさん、こんばんは。

思い出の歌です。
2005年か6年に、岩崎宏美さんが母校の高校(浄土真宗本願寺派)に歌いに来られたことがありました。
合唱部がお経にメロディーを付けて歌い、ゴダイゴ浅野さんのバンドがゴダイゴメドレーを演奏し、そして宏美さんが浅野さんのバンドをバックに歌い、最後一同の「威風堂々」で締める、ジョイントコンサートでした。
あの場で歌われた「ロマンス」「思秋期」「聖母たちのララバイ」はどれも記事にないような気がするので(間違っていたらごめんなさい)、今さら感はありません。
現役学生・卒業生(同窓会総会と茶道部茶会とコンサート)・一般向けの3回あって、私は卒業生向けのに行きました。
ここ数年、茶道部の部活は楽しかったなぁと思い出しますが、高校は友達も少なく進学校で勉強がきつかった思い出ばかりでした。来ていたのは学年で私一人でしたが、普段は読経・礼拝にも使われる講堂でのステージに、「この高校の卒業生で本当に良かった」と思いをかみしめた、当時を思い出します。

聖子ちゃんたちがデビューしてアイドルの世代交代があった頃だから、こんなスケールの大きな歌を世間が待っていたのかなと、今では思います。
何度でも聴きたい、時々歌いたい歌です。確かに、歌うのは大変ですね。

昭和57年は、子供向け番組「おかあさんといっしょ」のロングラン人形劇「にこにこぷん」が始まった年です。
作詞の山川啓介先生は、井出隆夫先生として脚本を担当され、劇中歌も作詞されました。
「にこにこぷん」のお話には、キャラクターの母親が登場しません。これは、井出先生が、見る子供達の母親が
仕事に出ていたり、病気だったり、死別か離婚をしていたりで、一緒に見られない家庭に配慮した為だそうです。それでも「おかあさんといっしょ」という番組で放送することで、「お母さん」の温もりや安心感を伝えたい…と願っておられたそうです。
今でも、人形劇はキャラクターの親が登場せず、井出先生の願いが生かされています。
「聖母たちのララバイ」は、男性達に「お母さん」の温もりや安心感を思い起こさせる歌でありたい…との願いがあったのかなと想像します。
by もとまろ (2019-09-08 20:50) 

もとまろ

すみません、追加させていただきます。

母校のコンサートで、宏美さんはまず「聖母たちのララバイ」を通常よりもややスローテンポで歌いました。次に「私が高校生のときに歌いました。学生の皆さんの今を意識して歌います」と前置きして「ロマンス」を、「高校を卒業してからはこんな気持ちになるのではないでしょうか」と前置きして「思秋期」を歌いました。
「聖母たちのララバイ」は前置きなしで歌われ、ご挨拶みたいだったなぁと思い出しています。
by もとまろ (2019-09-09 17:18) 

もとまろ

あ、それと、関東は台風で電車の計画運休とか停電とか被害がすごかったようですが、皆様大丈夫でしょうか?
by もとまろ (2019-09-09 17:25) 

ぽぽんた

もとまろさん、こんばんは! 今日は取り急ぎで、明日以降にまた書かせてもらいますね。

台風、凄かったです。 私はあまりの風の強さにサッシが割れるのが心配で、
朝4時から起きてます。
風でガラスがたわむほどだったので、本当に危なかったと思います。

今回の台風は千葉と東京に被害が集中しているようですが、今後、
まだまだ台風が来る可能性はあります。
もとまろさん、そして皆さま、くれぐれも注意しましょう。

by ぽぽんた (2019-09-09 23:33) 

White Autumn

ぽぽんたさん、台風の影響は大丈夫でしょうか。
今日も暑い中停電や断水が続く地域が多いようで心配です。

この春、勤務先の人たちとカラオケに行く機会がありました。人前で歌うこと自体十数年ぶりで不安でしたが「思秋期」を披露するとなぜか結構評判よくて。
「何か入れてほしい曲ありますか?」と聞いたら、上司(私と同年代の男性)がほろ酔い加減で

「聖母たちのララバイ歌って!」

応えてあげましたが、岩崎さんがいつも言っている通り、この歌ってすごい力があるのですね。しかし私はこの曲ちょっと…いえ、かなり大げさな印象がして、そう好きではないのです。私自身、この種の“重たい”愛情表現については亡き母とかつていろいろありましたから…カラオケはまさに上司サービスでした。(笑)山川啓介さんが得意とするスケールの大きさが、何か違う方向に行ってしまったような。

岩崎さんのコンサートに行くとこれは必ず歌います。お約束として聴いています。ちょっと辛いお話で申し訳ありませんが、今の岩崎さんがこの曲を歌うとファルセットの濁りが結構響いてきます。岩崎さんの地声は、テレビ番組や音源に記録されている若い頃よりも程よくふくよかになってきて、「わー、なんてきれい!」と感動するのですが、ファルセットに切り替えて歌いあげるところにくると「あれ?」と内心思わされることが結構あります。「私たち」のようなアップテンポの曲や「想い出の樹の下で」「あざやかな場面」などではそう目立たないのですが。この3曲はお客さんにも歌わせていますね。
喉を手術したという影響ももちろんありますが、ぽぽんたさんのお話からも、「聖母」の頃に喉を酷使しすぎたことが結果的に祟っているのでしょうね。
八神純子さんや石川ひとみさんが、今でもほぼ往年通りの発声できれいに聴かせてくれるのは、事情はどうあれ、歌から離れている時期が結構長くあったことも効いているのでしょう。厳しいね、と正直思います。

高校野球の行進曲のお話、「センチメンタル」は高校野球が大好きだった阿久悠さんの作品で初めて採用された曲ですね。開会式に岩崎さんが招待されて行ってきましたとお話していましたが、阿久さん行きたかったのではないかな、と思っていました。

前記事のコメントで、「ルビーの指環」「硝子の少年」の制作経緯についてご教示いただきありがとうございました。>もっふんさん
最近の松本さんは「上から目線で話す」こと自体が芸風のひとつですね。ファンは「また言っている~。」と、一種のお笑いとして楽しんでいます。
周囲のほとんどの人にとっては大先生ですから「ごもっとも」ですが、ユーミンと太田裕美さんだけは真正面からツッコミを入れてきます。さすがの松本さんも、この2人には頭が上がらない様子。ユーミンは「戦友」ですが、太田さんに対しては、たとえ自分より若くとも「聖母」的な面を無意識のうちに見ている様子が、お二人のtwitterや太田さんのラジオ番組からも伺えます。「聖母たちのララバイ」が多くの男性、それも特に岩崎さんのファンではない層にとっての「特別な一曲」である所以のように思えます。
by White Autumn (2019-09-11 07:00) 

ぽぽんた

もとまろさん、改めましてこんばんは! お返事が遅くなり申し訳ありません。

なかなか体験できないような音楽会ですね。 その時の様子を記録した映像があったら、
ぜひ観てみたいです。
実は「ロマンス」はこのブログで記事にした事があるんです。 今日、追記として
非公開にしていたブログ記事をほぼ全部公開した旨を書かせて頂きました。
その中に「ロマンス」もありますので、一度読んでみて下さいね。
「思秋期」は記事にはしてないのですが、「オリカラでピアノ」でYouTubeにアップ
してあるはずです(もしかして再生できない状態かも知れませんが…)。

山川啓介氏はそのような活動もされていたのですね。 「聖母たちのララバイ」の歌詞が
慈愛に満ちているのは、そのあたりに理由がありそうですね。
知らせて下さってありがとうございます。

この曲が大ヒットした時、当時の私はかなり驚きました。
昭和57年あたりだと、前年に「すみれ色の涙」のヒットはありましたが、
岩崎宏美さんはもうアイドルではなく中堅歌手でしたから、もう以前のような
大ヒットはないだろうな…と思っていたんです。
ただ、デビュー時からの宏美ファンとしては、一般的には「聖母たちのララバイ」が
現在では岩崎宏美さんの代表曲のように受け止められているのは、
正直「ちょっと違うな…」と思ってしまいます(^^;)

私の住んでいる市原市では、今も停電や断水が続いている区域があるようです。
私の住居は幸い何の被害もありませんでしたが、つくづく台風の恐ろしさを、
数十年ぶりに思い知らされた気がしています。
一日も早い全面復旧を心から願っています。

by ぽぽんた (2019-09-13 23:08) 

ぽぽんた

White Autumnさん、こんばんは! お返事が遅くなり申し訳ありません。

お心遣い、ありがとうございます。
昨日からようやく涼しくなりましたが、千葉ではまだまだ台風の被害から復旧していない
区域が多く、毎日テレビのニュースを胸が痛む思いで見ています。
おかげ様で、私の住居は特に被害もなく、本当にありがたいことと感謝しています。

カラオケに行ってリクエストを受けるなんて凄いですね!
私はカラオケに行くと、A面の曲はどうも避けてしまったりします。
根っからの天邪鬼です(^^;)

私もよく考えるのですが、基本的に酷使に耐える喉とそうでない喉は確かにあるのでは、
と思うんですね。
若い頃に喉を使いすぎたのはきっと大きいと思うのですが、何となく今の岩崎宏美さんは、
全く根拠のない主観ですが、慎重になり過ぎている気がするんです。
以前地声で出していた音域をどんどんファルセットに頼るようになっていますが、
加齢も勿論原因でしょうが、本当は出そうと思えば出せる声をわざとセーブしている
ように思えてならないんです。
「聖母たちのララバイ」のような曲は特に、地声で通す方が説得力を増すのは
間違いないと思うのですが、私もテレビでその曲の、最近の歌唱を耳にすると、
何だか別物になっちゃったな、とガッカリする事が多いです。

昔は作曲家や作詞家はマスコミには滅多に出なかったものですが、今は何かにつけ
ご意見番のようになっている事が多いですねぇ。
私は個人的にはそのような風潮は嫌ですが、時代だから仕方ないのでしょうね…。

by ぽぽんた (2019-09-13 23:26) 

nuko222

ぽぽんたさん、こんばんは。

台風の影響は大丈夫ですか?

当方の近所では桜の木が折れて道路にはみ出てしまって、仕方なくチェーンソで切っている所もありました。
今まではあまり台風の関東直撃は無かったのですが、今後は温暖化のこともあって恒例になるのかも?と思うと非常用品も地震だけでなく台風にも備えなくては!と思った次第です。

さて、今回のお題の「聖母たちのララバイ」ですが、ぽぽんたさんの記事に集約されていますが、ドラマのオープニングテーマ曲として毎週 番宣などを含め聞いていたので、”聞きすぎて飽きた”感じさえありました。

シングルも当時、買っていたので聴いていたのですが、改めて聴くため今回ぽぽんたさんの紹介にあった「スペシャル・コレクション○岩崎宏美」(品番:VDR-8)の中古品をディスクユニオンで買ってきて聴いてみました。

ぽぽんたさんの言われるようにダイナミックレンジを感じられるその当時のマスタリングです。(音圧を高めるように無理な事をしていない)
当然、他の収録曲も同様に伸びやかな音でした。

ですが、当方がこのCDで感じたのは、アナログ盤の時にはあったと思う高域のサチる音(破裂音等・サシスセソのような歌の発音のSi音)がマイルドになっていたことです。
多分、マスタリング時にディエッサー(そのような音を低減する機材)で処理していると思われます。


このCDの基準録音レベルは現在のものより低く設定されているので、大きいボリュームで再生しても耳が痛くなることは無いでしょう。このレベルだとダイナミックレンジも確保され、音が豊かに聞こえるのです。

以下は録音エンジニアのたわごとと思ってください。

当方の師匠方々もレベル競争(いかにCDに大きく聞こえるようにマスタリングするかというもの)は良くないと言っていましたが、90年代から海外の音源から顕著になってしまって追従せざるを得なくなってしまいました。

「スペシャル・コレクション○岩崎宏美」(品番:VDR-8)は-16dB(デジタル収録の最大レベルを0dBとして音の音量を下げていった時に最大レベルより16デシベル低い)を基準(マスターレコーダーの0VUをデジタルプロセッサーの-16dBに合わせる)程度に抑えて制作されていると思いますが、その後 基準レベルがどんどん上がって行きました。

当方がマスタリング作業していた90年代には各社ほぼー10dBが基準となっておりましたが、海外のヒップホップ音源(CDマスター)ではー4dB程度が基準と思われるものも聞いております。(耳が痛いだけ!もはや歪だらけで正常かどうか判らなかった)

★ 別件ですが、9月にディスクユニオンからミキサーの先輩である内沼さんの本「内沼映二が語る レコーディング・エンジニア史」というものが発刊されています。

ビクター音響研究所のミキシングルーム等の音場設計者だった豊島さんのインタビューもあります。(当方も色々とお世話になりました)

録音テクニックや機材についての記述もいっぱいあるので、ぽぽんたさんにオススメです。(新宿のディスクユニオン・昭和歌謡館のレジ前平台にあります)
ミキサーズラボの集大成です。(カバーデザインがAMPEXのテープ箱風です。知っている人にはウケる仕様)

長文ですみません。






by nuko222 (2019-09-16 00:23) 

ぽぽんた

nuko222さん、こんにちは! お久しぶりです。

ご心配i頂きありがとうございます。
おかげ様で私の住居やごくごくこの周辺では停電や断水もなかったのですが、
同じ市内では少し離れた所でもその被害があったりで本当に大変だったようです。
今も、ブルーシートがかけられた屋根の家があちらこちらにあったり、
どこの何ともわからないようなアクリルの大きな破片が落ちていたりします。
木々もなぎ倒されたように折れているものが多く、あの風の凄まじさが尋常でなかった
事がよくわかります。

「スペシャル・コレクション」の検証をして下さったんですね!ありがとうございます。
現行のCDと比較すると、当時のCDは音量が低すぎるとも感じられますね。
しかしそれは現行のものに慣れているからであって、CDのダイナミックレンジを生かそうと
思うと、平均音量はどうしても低くなってしまうんですよね。

昔レコードしかなかった時代に、同じ曲がLPとシングルの両方に入っている場合、
シングルの方が音量が大きく、そうするとなぜかその方が音質まで良いように感じてしまう
ことには、私も気づいていました。
実質的な良さよりも、パッと聴きでよく感じる事は商品価値として重要、それがCDの
音量が上がっていく原因の一つだった、と言う事もわかる気がします。
しかし何事も過ぎたるは及ばざるが如しで、圧縮しすぎてダイナミックレンジがせまく、
つぶれたような音になってしまったCDも数多く、なぜそれが商品としておかしいと言う事が
発売する立場の人間がわからないのだろう?と疑問に思ったりもします。

ディエッサーはボーカルの録音の時に、そのトラックだけに使うのが普通と思うのですが、
マスタリングの時にも用いる事があるのですか? そうすると、ボーカルのS音だけでなく
シンバルなども弱まってしまう気がするのですが…。
しかし今思い出したのですが、小柳ルミ子さんのベスト盤に入っていた「漁火恋唄」で、
2コーラス目の♪波も冷たかろ…そえてあげたや そえてあげたや♪のフレーズで、
「つ」「そ」の音が極端に抑えられていて、昔聴いたレコードとは明らかに違うんです。
やはりそれもディエッサーが使われているのかな、と今、納得できた気がします。

船山先生の本が来月発売されるのは知っていたのですが、内沼映二氏の書籍が発売
されていた事は知りませんでした。 知らせて下さってありがとうございます!
Amazonでも販売されているので、早速注文しました。
もしかしたら、私が最も望んでいた本、かも知れません。

by ぽぽんた (2019-09-16 13:24) 

nuko222

ぽぽんたさん、早速のお返事ありがとうございます。

ディエッサーはボーカル由来のサシスセソの周波数をコンプレッションしますので、ドラムのハイハット)やシンバルには多少影響します。
ビクタースタジオにも確かあったと思うのですが、dBx社のモジュールタイプのディエッサー(型番 #902)が歌本来の帯域はバイパスして、シ音だけに素晴らしく効きが良くて当方も常用しておりました。

このベストの全体的な傾向としてやや高域が甘いかな?と感じて、例えるならエンファシスの掛かっていないCDを、少しディエンファシスしたような感じの音(かえって判りにくいでしょうか?)

それと、このCD盤時代のビクター音産のものは日本ビクター(ビクター音響研究所)製のオーディオプロセッサー DAS-90とかDAS-900を使っているのですが、同時期に多くのメーカー(レコード会社)が使っていたSONY(厚木工場)製のPCM-1610と比べると音が柔らかい感じだったので仕上がりに違いが出たのかもしれません。

このベストやビクタースタジオのやり方は判りませんが、まだ時期的に「CDマスタリング」というものが確立していなかったので、レコード時代の延長で各アーティスト担当のミキサーがトラックダウンしたテープを自分でCD編集していた所も多かった事は知っています。

これが80年代後半になってレコード盤(アナログ盤)が消滅してきて、マスタリングに特化した外部のスタジオが出来てきました。

アメリカなどでは早くから「ゲートウェイマスタリング」やエンジニアのボブ・ラディックさんのマスタリング会社などがあったので影響されたことも一因です。(日本人でアメリカでマスタリングをやっていた人もいました。)

でも、信濃町のCBS/SONYなどは早くからマスタリングをレコードのカッティングエンジニアがやってました。自前でカッティングやプレスをやっていた会社は技術もすごい!

まあ、CDはSONYとオランダのフィリップスが開発したので当然でしょうけれど。
ですから日本において、CDのリードイン的な1曲目の音がプレーヤーで選曲されてから音が出るまでの無音(デジタル的にゼロ)時間(オフセットタイムと称して演奏時間に含まれる)を1秒と決めたのも信濃町のカッティングです。(以降、2曲目からは0.5秒、最終曲が終わってからの無音も0.5秒だったかな?)
今はもう自由に設定しているかもしれませんが、90年代まで大体の国産CDはそんな設定です。

ぜんぜんお題と関係のない話を思わず長く書いてしまったので、このあたりで失礼します。
返答無用です。
by nuko222 (2019-09-17 23:19) 

マコジ

ご無沙汰しております.。
私もお題と全く関係のない話をさせてくださいm(_ _)m
先日「よい子の歌謡曲」創刊40周年記念トークライブが渋谷であり、これに合わせて作られた最新号に榊ひろとさんも2曲レビューを書いているので報告します(^^ 私も本名で少し書いてます(笑)。
当初は非売品の予定でしたが、ごく一部の古本屋に出回っているようなのでよかったら検索してみてください。
by マコジ (2019-10-07 23:10) 

ぽぽんた

マコジさん、こんばんは! お返事が大変遅くなり、申し訳ありません。

トークライブ、マコジさんもご出演なさったのですか?
「よい子の歌謡曲」の最新号ですね! 探してみます。 マコジさんの正体がわかるかも(^^)

by ぽぽんた (2019-10-12 23:23) 

もっふん

内沼さんの本を読んで自分の耳の悪さは音楽に関わるには致命的なのではないかと、猛烈にモチベが下がっているもっふんです。

そんなド素人がプロとセミプロの話に入っちゃダメかなとも思いましたが、素人が考える事も披露してみれば笑いのタネにして頂けるのではないかと思い直して、今さらながらコメントしてみます。

お話の中の「高音アマいよね」と言うディエッサーなのかDOLBYオフ録オン再生みたいな話なのかについて私が最初に思ったのはCDの規格が44.1kHzサンプリングである事でした。上限20kHzと言われている人間の可聴域に対してこのサンプリングレートは充分にも見えますが、22.05kHzの正弦波を録音したら完全に矩形波(高次倍音を含む)になってしまいますよね。それは設計する人も分かっていたので高次倍音を切り捨てるためのハイカットフィルタを通す事もお約束であるはずです。

内沼さんの書籍でも図解して触れておられましたが、デジタル録音においては高周波数側のエンドでは本質的に波形の再現性が悪く、倍音そのものは切り捨ててもその副帯波(大抵の場合三次波)が原音周波数付近に現れる可能性はあった(今もある?)のではないでしょうか。

そういう「計算できない雑味成分」が入る事を嫌った結果、かなり意識して高音域を削らざるを得なかったと言うのが当時の事情であるとは考えられないでしょうか。

その後、高音域にどのような周波数を流すとどのような出音になるかと言うノウハウが確立して行き、いわゆる「ドンシャリ」の時代に我々が聴いていた高音は、実は一次音源が出していた音とはかけ離れた物だったのではないかと思ったりもします。

また「バランスの良いミックスにおける低音は50%(-6db)」と言う氏のお考えは、実は当該書籍を読む前にタモリ倶楽部(!)で耳にしておりました。便利な世の中で動画サイトにも残っているようです。

 https://www.youtube.com/watch?v=5rH2PkfypfA


CDが本来持っているダイナミックレンジを殺すような、世に言う「音圧競争」と言うのは、ドンシャリの「ドン」である低音域を強調した楽曲がリスナー受けするようになり、レンジの半分を使うだけでは済まなくなってしまった結果なのではないかと思ったりします。

音が大きいと音質も良く聴こえる、と言うお話もありましたが、聴く時の絶対的な音量はアンプのボリュームで調整してしまうのではないかとも思いました。ただ、信号レベルが高ければ当然S/N比は大きく改善されるので、元々LPに比べて線速度が速いEPですからそういう面での貢献はあっただろうと想像出来るくらいです。

録音の現場では「オフマイクでオンの音を録る」(スイートスポットを探すような話)など、私のような平凡以下の耳の持ち主には「想像も出来ない世界である」事だけが「想像出来る」のみ、と言うのが悲しい現実であったりします。

他にも、アマチュア向けの入門書などには「リバーブは一種類にしなさい」と書いてあるものも多く、プロとアマチュアの間にある垣根の高さと言うか崖の深さと言うか、いずれにしても越え難い壁の存在を思い知らされたようで、ほとほと溜息しか出ません。
_
by もっふん (2019-10-25 02:16) 

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